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4 ね、こんなことってある?

 ベルベットのスツールに座ったチョットマ。

 泣き出しそうになるのをこらえて、話してくれる。

 サリは、上官のンドペキと作戦行動中だったらしい。


 いつも、最近の出来事を話してくれる「娘」。

 そのほとんどは、自分が属しているニューキーツ東部方面攻撃隊のこと。

 おかげで、イコマは攻撃隊の成り立ちや構成員について、かなり詳しく知っている。

 日々、どんな活動をし、どういうルールがあるのかさえ知っている。



「サリがやられた!」

 ゴーグルに流れた緑色の文字は、ンドペキが発したものだった。

 チョットマは、記憶に留めただけで、作業に没頭していた。

 先ほどから、執拗に攻撃してくる自動殺傷装置系ロボが放つ電流系エネルギー弾を、ハンディシールドで受け流しながら、小さな箱を地面に据えた。


 箱は超密度の金属製。

 上部にふたつのスイッチが付いている。手の平に軽々と乗るシンプルなもの。


 スイッチを押すと、振り返りざまにショットガンの引き金を引き、装置系ロボを粉砕すると、スコープのモードを切り替えた。

 小箱からは既に大量の赤い髪が伸びている。

 箱の金属そのものが、かろうじて目に見える程のごく微細な糸となって、周辺の希少金属を採取してくるのだ。




 周りはありとあらゆる瓦礫で埋め尽くされている。

 見慣れた光景。

 というより、チョットマはこんな光景しか見たことがなかった。

 どこまで行けども、コンクリートと金属と樹脂系のゴミの山。

 そして砂塵舞うばかりの荒れた原野。


 これが地球の光景なのだと思っている。


 もっとも、チョットマの移動継続能力は高い方ではない。

 ねぐらとしている街から遠出したとしても、距離にしてせいぜい三百キロメートルほど。

 その向こうに何があるのか、知らなかったし、知りたいとも思わなかった。

 少なくともこの瓦礫の山より、いいものが待っているとは想像もしなかったからである。




 誰かがやられる。

 これは、珍しいことではない。

 毎日のように起こるかというと、そうでもないが、チョットマ自身もついひと月ほど前、手に負えない相手に挟まれてしまい、命を落としそうになった。


 たとえ死んでも、政府が管轄する再生機構によって、たいていの場合、数日後にはほとんど元のような体となって街に出て行くことができる。

 先日も同僚の隊員が死んだが、三日後には再生され、その二日後にはいつものように瓦礫の山に突入している。


 甦ったのか、というとそうではない。

 再生されたのである。



 しかし、サリが死んでから、既に七日も経っていた。



「ね、パパ。仲間のみんなは、サリは政府に殺されたんだって騒いでる。ね、こんなことってある?」


 イコマは迷った。

 どう応えてやるべきか。


「みんなは、どう言ってるんだい?」

 チョットマは苛立ちを隠そうとせず、

「知ってることがあるのなら、教えてよ!」

 と、金属的な声で叫ぶように言った。

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