49 警告ランプ点滅
ニューキーツ政府治安省情報局の一室。
バードがコーヒーカップを手に自席に戻ると、コンピュータが警告ランプを点滅させていた。
自動監視がマーキングした人物コードを送ってきている。
要注意Eレベルとある。
バードが担当している市民の数は二万人。
一人の監視員が特定人物群を担当するのではなく、監視員は重なり合っている。
したがって、世界中の誰もが三人以上のオペレータから監視されている計算になる。
人の目による監視の前に、コンピュータによってスクリーニングされるのだが、そのアルゴリズムは日々変更されている。
何らかの言葉が、あるいは行動がアラートシステムの人工知能に引っかかると、監視員に知らされるのだ。
人工知能がなぜ要警戒、要注意と判断したのかは、ほとんどの場合、知らされることはないが、今回はその理由が明示されていた。
「英知の壷 異常訪問」
誰がどこに何回行こうが、いいじゃない。
と、心の中で毒づいてから、バードはその人物IDにアクセスした。
英知の壷で見る夢は、その人自身の過去であることが多い。
監視員も同じものを見ることはできるが、さすがに気が引ける。
会話を盗み聞きするのも同じようなものだが、それでも文字としてデータ化されていることで、罪の意識は薄まる。
しかも、この人物は要注意Eレベルでもある。緊急度は低い。
まず、その人物が誰かと交わした会話のアーカイブを表示させた。
はいはい。あなたは誰?
誰とどんなお話をしたの?
適当に選んで、ひとつのデータを開いた。
それにしても、まずいコーヒーね。
本物のコーヒー豆を挽いて淹れたコーヒーの味や香り。とうの昔に忘れてしまったけど。
アーカイブの中には、兵士との面会時の会話が並んでいた。
ひとつのフレーズが目に飛び込んできた。




