48 ヤタッ! 来てくれるのね!
「援護する!」
ヘッダーの中に、ンドペキの声が響いた。
ヤタッ!
来てくれるのね!
チョットマは空地の中をゆっくり駆け回りながら、相手の二の矢を待った。
撃って来い!
「相手は!」
「わからない!」
ンドペキの位置がスコープに表示されている。
モニタには所属部隊員を示す緑色の点。
ンドペキという名と到達予測の三十セカンドという数字。
しかし、敵を示すオレンジ色の点も、他部隊員を示すピンク色の点も、非戦闘員を示す白い点も表示されていない。
もともと、この辺りには敵の存在は稀だ。
東部方面攻撃隊が制圧しているエリア。
ほぼ毎日、誰かが巡回し、マシンの侵入を阻止している。
パパとのせっかくのピクニックが。
でも、いいっか。
ンドペキが助けてくれるのなら。
ん?
ということは、パパとンドペキのお話も、ここで?
私がいる前で!
うわ!
恥ずかしい!
どうしよ!
というより、私が紹介しなくちゃいけないのかな?
ンドペキの緑ポイントは、一直線にチョットマに向かってくるのではなかった。
攻撃が発せられた地点に向かっている。
「おまえはそこにおれ!」
「ハイ!」
敵がまだ近くに潜んでいるとしたら、地下かなり深く潜ったとしか考えられない。
さすがに十メートル以深の地下に潜り込まれたら、探査モードは役に立たない。
気をつけて。
と、あやうく言いそうになった。
上官であり、熟練の兵士であるンドペキに、チョットマが掛ける言葉ではない。
でも、もし地下に潜んだ敵の真上にンドペキがうっかり近付いたら……。
ンドペキに限って、そんなへまをやらかすはずがない。
「状況を説明しろ!」
「ハイ!」
突然、背後から撃たれたこと。
それ以外に、説明することはなかった。
ンドペキは既にかなりの距離を移動している。
敵をくまなく捜索しながら、空地の周りをジグザグに走り回っている。
「敵を視認していません! 系統、機種共に確認できませんでした!」
「マシンか?」
「ん……?」
わからない。
てっきりマシン系だと思ったけど……。
生体系の敵に、エネルギー弾を放つものはいない。
やつらは肉弾戦か、肉体に組み込まれた旧式のマシンガンを派手にぶっ放すか、あるいは火薬系、あるいは毒系の弾を放つだけだ。
エネルギー弾はもちろん、プラズマ弾や、量子弾、核エネルギー系の武器を装備しているものはいない。
「マシンか?」
ンドペキからまた同じ問い。
え?
えええっ!
マシンでなく、生体系の敵でなければ、人間ということになるけど……。
そんな!
これまで、人間に攻撃されたことはない。
なんだって、私が!
ありえない!
誰にも迷惑かけてないし!
結局、敵は姿を消していた。
まだ、地下に潜んでいる可能性を考えて、チョットマとンドペキはアリーナに移動した。
アリーナであれば、常時、隊員が警護に当たっている。
地下であれ、大半が崩れ去った大屋根であれ、大量の付室であれ、大階段下の巨大倉庫であれ、敵が潜んでいる恐れは小さい。
念のため、アリーナのど真ん中に突っ立って、チョットマはンドペキに改めて報告した。
互いに背を向け、周囲を警戒しつつ。