489 愛……
かつて、アンドロは人間のために働くロボットとして作られた。
しかし、その必要度が増すにつれ、そして人間の数が減るにつれ、単なる人造人間、つまりロボットとしてのアンドロだけではなく、ごく一部には、ある程度の感情を持ったり、思考の深みを持ったアンドロが作られるようになった。
それらの高度なアンドロが、街のありとあらゆる機能や生産の現場、また街の秩序を保つ組織を管理し統率する役割に就いた。
今や、ホメムやマトやメルキトに比べて、アンドロの数はその数十倍以上に膨れ上がっている。
生産ロボットのように御しきれる数ではもうない。
「いずれ彼らが蜂起することは、明らかでした」
「彼らは、なにをしようとしているのですか」
「権利欲」
「街を支配する、そういう権力ですか」
「少し違います。彼らが欲しいのは、愛です」
「愛……」
「そんな感情を持つ権利」
よくわからない。
ハワードのことが頭をよぎり、イコマは言葉に詰まった。
フライングアイには表情がない。
会話には不向きだ。
スムースに言葉を紡いでいかなければならない。
何かを言わなければ。
しかし、レイチェルにさらに説明を促すいい言葉が見つからない。
迷いを察したからか、レイチェルが説明を付け加えてくれた。
「彼らにはそのような感情はありません。しかし、彼らの一部が気づきました。自分達に欠けているのは、愛という感情がないことだと」
ハワードも同じようなことを言っていた。
「愛……」
そうなのだろう。
彼らの要求は。




