47 あんたが瞬きする間に、息の根、止めてあげる!
パパはやっぱり素敵だな!
あの人に会うって!
どんな話をするんだろ。
うれしい!
でも、ちょっと恥ずかしい。
ねえ、あなた。
私のこと、パパにどう話すの?
ん!
なんだよ、こんなときに!
チョットマは背後に悪寒がした。
強い殺意を感じる。
「きっと、ンドペキもそうしてくれると思うよ!」
と、パパとはしゃぎながらも、背後の悪意の大きさを測っていた。
何かが近付いてくる。
同時に、心の中のアラームの針が急上昇している。
チョットマの体は臨戦態勢をとった。
まずい!
何者かの気配との間合いは、概ね二百メートル!
パパをどうする!
バックパックに入ってもらうのは間に合わない!
チョットマがフライングアイを掴んだとき、背後の何者かの殺意が最高潮に達し、武器のエネルギーゲージが振り切れたことを感じた。
横っ飛びに、百メートルばかり移動。
と同時に、元いた場所のコンクリートの塊が、すさまじいエネルギー弾で粉々に吹き飛んだ。
立ち止まるやいなや、お手玉のようにフライングアイを空中に置くように手を離し、その間に応戦した。
スコープには何も映っていない。
それでも、攻撃を仕掛けられたと思える位置に、レーザー弾を放つ。
手応えはない。
その間、フライングアイは数センチばかり落下している。
羽を広げようとしているが、構わず引っ掴み、再度移動。
依然、スコープに敵の存在は表示されない。
くっ。
許さないからね!
乙女を背後から攻めるなんて、卑劣なんだから!
移動しつつ、フライングアイをバックパックに放り込んだ。
これで、いつでも反撃できる。
バカね!
エネルギー弾で私を狙うなんて!
さあ、撃って来い!
もう充填されたでしょ!
エネルギー弾がこちらに到達するまでに、レーザー弾をお見舞いしてやる!
エネルギー弾のように物的な質量を持つ弾での攻撃なら、敵との距離が二百メートルあれば、チョットマの俊敏さをもってすれば、弾を避けることも、その間に反撃することも可能だ。
こちらはレーザー弾。
光速とほぼ同じ速度で相手に到達する。
さあ!
どうしたの!
撃って来い!
あんたが瞬きする間に、息の根、止めてあげる!
すでにチョットマは、視界の利く空地に出ていた。
港のコンテナヤードか、巨大駐車場の名残だろう。
自分の姿を晒す位置だが、その方がチョットマには都合がよい。
敵の攻撃を避ける自信はある。
対して、反撃が容易だからだ。
建物の残骸やコンクリートの塊など、反撃のレーザー弾を遮るものがない。
相手の姿が見えておれば、なお好都合だ。
さあ、出て来い!
でかいネズミめ!
敵の放ったエネルギー弾の破壊力から見れば、かなり大型のマシンだ。
少なくとも人体以上の図体でないと、あれほどの武器を搭載することはできない。
かつ、飛翔系ではないはず。
建物の残骸など瓦礫に埋もれた場所でなく、開けた場所に出れば、姿を視認できるはず。
チョットマはスコープのモードを変えた。
意識するだけで変わる優れもの。
可視光線で見る景と、様々なエネルギー探査モードで見る景が自動的に切り替わるパターン。
切り替えといっても、高速なので、ひとつの画像に見える。
可視光線で見る景に、エネルギーの存在が重なって見える。
隠れた敵と対峙するときに有効なモード。
しかし、エネルギー弾の着弾点とその軌跡以外に、エネルギーの存在は確認できない。
ハエほどの小さな飛翔系のマシンなどは探知しにくいが、それ以上の大きさがあれば、たとえ巨大なコンクリート塊に阻まれていても、探査し損ねるということはない。
精度の高い装備であるにもかかわらず、敵の位置は表示されていなかった。
どこに隠れてる。
卑怯者!
攻撃の着弾点からは、盛大な炎が上がり始めた。
コンクリートさえ瞬時に沸騰し、激しく燃えている。
弾が通過した軌跡にも、まだエネルギーが渦巻いている。
大気中のあらゆる物質が燃えて、七色の光の帯の中にキラキラと粒子が舞っている。