479 これ以上、悲しませるわけにはいかない
アヤの回復は目覚しく、作ってもらった義足を使いこなしている。
かつて兵士だった経験も手伝って、今では立派な後方隊員。
ただ、やはりイコマをおじさんと呼ぶ。
もちろん、それでいい。
アヤとチョットマは互いに姉妹と言い合って、仲がよい。
アヤが、聞き耳頭巾の布をチョットマに使わせようとするが、勘弁してと逃げ回られている。
スゥは、自分の気持ちをさらけだしたことによって、吹っ切れたのだろう。
物資調達に情報収集に、街にエリアREFにと、飛び回っている。
ユウは、連日、イコマのバーチャルな大阪の部屋にやってくる。
ややもすれば、そこが作戦会議室になってしまいそうになるが、できるだけそうならないように、ふたりの時間を恋人らしく過ごそうと努めている。
地球に帰還したパリサイドの中での自分の立ち位置について、ユウは多くを語らない。
しかし、イコマは楽観していた。
もう絶対に離れない。
離れるものか。
プリブが合流してきた。
あのバーチャルの水壁からプリブが姿を現したとき、チョットマは誰憚ることなく抱きつき、わんわん泣いた。
「再生、間に合ったんだね! よかった!」
「どういうこと?」
「どうでもいいよ! そんなこと!」
「なんだよ。そういや、俺の部屋、入っただろ」
「うん! 使わせてもらった!」
「シャワーブース、きちんと作り直しておいた」
「やた! えっと、でも、それって」
そして、ンドペキは。
ユウとスゥのどちらをとるのか。
正直に言うと、決めあぐねていた。
アギのイコマとの同期は、こちらもまだ完全とはいかないようで、相変わらず、ふたりの意識が同居した状態のままだった。
自然と、アギのイコマはJP01すなわちユウと。
ンドペキはスゥと。
そんな棲み分けができつつあった。
ユウもスゥも、その状態をなんとなく受け入れているようだった。
それはそれでいい。
街を奪還し、人々が新しい暮らしに慣れる頃には、何とかなるのだろう。
ンドペキは思う。
自分の愚かさによって、レイチェルとサリというふたりの女性を失ってしまった。
ふたりの表情が、ふたりの声が、そしてふたりの名前が心から消えることはないが、沈んだ顔は見せるまい。
目の前には隊員たちがいる。
アヤがいる、スゥがいる、ユウがいる。
そして、チョットマも。
サリと同じ任務を与えられていたチョットマが。
自分がもし、彼女の気持ちに気づいていて、あの日、サリではなくチョットマを、と考えていたなら、彼女の運命はサリの運命だったはず。
これ以上、チョットマを悲しませるわけにはいかない。




