474 ハワードの嘘
「端的に言おう。それはハワードに関係したこと」
フライングアイの言葉に、隊員達の目が部屋の隅に蹲ったアンドロに向けられた。
「ハワードに、僕は謝らなくてはいけない。彼は、正真正銘のレイチェルの部下。というより信奉者と言っていいかもしれない。レイチェルを追って水流に飛び込むなんて」
ハワードは依然として頭を抱えたままだったが、ゆっくりと顔を上げた。
「だが彼は、僕に嘘をついていた。その嘘に気付いて、僕はあることに気付いた」
ハワードはサリの消息について調べてみると言いながら、これといった報告はなかった。
僕は、彼が隠しごとをしているのではないかと感じ始めた。
なぜ、隠す必要がある。
サリの件は、アヤ、つまりハワードにとってのバードの失踪に関係しているようでもないのに。
ハワードは情報局の一職員とはいうものの、特殊な情報も持っているのではないか。
僕はそう感じ始めていた。
当初、ハワードは、レイチェルは雲の上の存在で、自分は近付くことさえできないと言った。
しかし、アヤはこう言ったのだ。
ハワードがレイチェルとふたりで話しているのを、何度か見かけたことがある、と。
そして現に、洞窟にやってきたとき、レイチェルは上機嫌で出迎え、話したいことがあると言った。
ハワードはハワードで、ンドペキに、あなた個人に関わりのある任務であると仄めかした。
では、ハワードの任務とは、どういうものだったのか。
「ここから先は、ハワード自身に話してもらった方が正確でしょう」
イコマはハワードに説明を促した。
ハワードの任務。
長官のシークレットサービスの一員として。
レイチェルから指示された秘密の指示。
イコマはこの内容に確たる考えを持っているわけではなかった。
状況を積み上げると、そうに違いないと思うばかりで、証拠は皆無。
それに、それはンドペキにも関わること。
ひいては他の隊員にも関わること。
だからこそ、ハワードの口から話して欲しいと思っていた。
ハワードは、もう泣いてはいない。
さっぱりした顔で、しかもクリアな瞳でフライングアイはじめ、作戦会議室の面々を見つめている。
自分の出番があるのではないか、と期待さえ込めた表情で。
「レイチェル長官が殺されてしまった。そうなった以上、私の任務は消滅したといえるでしょう」
予想通り、そう言ってハワードが説明を始めた。




