459 俺達のレイチェルを……
すでに一分ほどが経過している。
淵は、何事もなかったかのように黒々とし、緩やかに水を流しているだけ。
飛び込んだ隊員が一人。ロクモンの副官。
もうひとり、ハワード。
ただ、ロクモンの部下とハワードはその場で引き上げられている。
同室となった隊員らが、飛び込んだ二人の足を咄嗟に掴んでいた。
誰もがそこに凍りついたかのように突っ立っていた。
ンドペキは水際に立ったまま、ものすごい形相で水面を見つめている。
万一の時にはンドペキを抱え込もうとするかのように、パキトポークがすぐ横で睨んでいる。
KC36632が、レイチェルを刺した……。
抱え込んで、水に飛び込んだ……。
そのことが全員の頭に染み込んでいった。
だれも止められなかった。
完全に油断していた……。
KC36632はレイチェルに話しかけることもなく、近付くやいなや、隠し持った短剣もろとも体をぶつけたのである。
スジーウォンの声がした。
「KC36632だったのか?」
ンドペキが振り返った。
視線をまともに受けて、スジーウォンはためらい、首をすくめた。
チョットマは胸が苦しくなった。
あれはKC36632ではない……。
まさか……。
まさか。
サリ。
サリ……。
スゥの声がした。
「KC36632じゃない」
ンドペキがスゥに向き直り、睨みつけた。
その視線を跳ね返すスゥ。
ふたりは睨みあったまま、数分が経った。
やがて、ンドペキはがっくり肩を落とした。
「なんてことだ……」
と、頭を抱え込んだ。
「くそ……」
そしてうなだれた。
「俺達のレイチェルを……」
ロクモンが仁王立ちしたまま、水面を睨みつけていた。
その肩は、誰の目にも分かるくらい、震えていた。




