458 閣下!
あっ!
次の瞬間、目の隅に映ったもの。
あああっ!
KC36632がレイチェルを抱え込んで水に飛び込むのが見えた。
うわ!
レイチェル!
それを追って、二、三の隊員が続こうとする。
ンドペキが「追うな!」と叫ぶ。
「照明!」
ロクモンが駆け寄る。
「閣下!」
誰もが水辺に突進した。
灯りに照らされるまでもなく、水面には赤い血が浮かび上がってきた。
固唾を呑んで淵を見守るが、人影はない。
広がった赤い血も、たちまち流水に溶けていく。
「レイチェル!」
「レイチェル長官!」
「閣下!」
「くっそ!」
「なんだ!」
「どういうことなんだ!」
チョットマは呆然と立ち尽くした。
ンドペキが叫んでいる。
「瞑想の間に向かえ! ホトキンの間もだ!」
隊員が駆け出していく。
伏流水の流れは深く速い。
絶対に水に入ってはいけないと厳命している。
確実に人は溺れ死ぬ。
じりじりと十数秒が過ぎた。
KC36632もレイチェルも、そして彼女らを追って飛び込んだ隊員も、だれも水面に現れない。
「くそ! どうにかできないのか!」
悲痛な声が上がった。
しかし、水面を見つめる以外に、どうすることもできない。




