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454 ふたりとも、もういいって

 辛かった。


 洞窟に始めて来たときも、スゥは涙ぐんでいた。

 そして、自分の記憶がないことで、スゥを悲しませたと思っていた。


 ようやく記憶を取り戻し、スゥが、かつて最も愛した女性だったことを思い出した。

 なのに、どうなってもいい、とはどういうことなんだ!



「だって、ユウ本人がここにいるんだよ。クローンではない、本物のユウが!」

 すかさず、ユウがスゥの言葉を遮った。

「もう一度言うよ。ふたりとも、もういいって」


 それきり、スゥは黙ってしまい、また睫に涙をためた。




 ンドペキは、事の成り行きに気がついた。


 自分が誰を愛しているのか、ということに。


 さっきは、スゥを、そしてユウを愛していると言った。

 それは心の赴くままに言ったこと。


 では、現実はどうなる……。



 目の前に、ユウと同期したスゥがいて、ユウ本人がいる。


 自分はスゥを愛している。

 それはクローンからマトになったスゥ。


 しかし、スゥの存在はユウとしての存在でもある。

 しかも、洞窟を用意し、導いてくれたのは、クローンのスゥではなく、ユウの意識だった。


 そして、生駒延治としてのンドペキは、心の底から三条優を愛しているのだ。



 そんな心が、今自分の中に同居している!




 ユウがスゥに声を掛けた。


「私達の意識は、上手く同期しなかったみたいね」


 もうスゥは、泣きじゃくっていた。

 また、首を激しく振った。


「違う。同期している! 今、ユウが考えていることは、私自身の考え。私自身、何の違和感もない。でも、でも!」

「だから、上手くいかなかったのよ。スゥ、あなたは、あなたであり続けようとしている」


「違う! 私は三条優! でも……」

「苦しいよね……」

「ううん。だから私は、もう……」



 ユウが大きく溜息をついた。



「あなたはわかっているのよ。自分が三条優じゃないことが。だから苦しんでいるのね。ユウであることが受け入れられないのよ」

「そうじゃない……」


「私は、感じていた。あなたの苦しみを。だって、あなたは私だもの。ね、シリー川の会談のとき」

「あれは……」


「でしょ。あなたは私にンドペキを取られてしまうことに我慢ができなかった。ノブと交わした約束、最初にキスしようねという約束。あのステージの上で、あなたはそうなることに我慢がならなかった。だから、発砲した」



「ああああっ! そういう……」


 なんとあれは!

 ンドペキは、心に鉄の楔を打ちつけられたような気がした。

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