444 おまえの顔は見飽きたんだよ
部屋の入り口でふたりは無事を喜び合っている。
面会が終れば、さっさと帰ってくれ。
あの調子なら、もう、アヤと会うこともあるまい。
忙しいんだ。俺は。
「レイチェル長官。お話が」
ハワードが改まった口調になっている。
「そう?」
「ご判断を頂きたいことがありまして」
「そうねえ」
レイチェルと目が合った。
ん? 人払いをせよということか?
俺に立ち去れと?
それなら、ハワードを自分の部屋に入れればいいではないか。
レイチェルがもの言いたげな目をしている。
ん?
自分の部屋に入れるのは抵抗があるのか。
知らないぞ。
予備の部屋など、あるはずがない。
話があるなら、廊下でも大広間でも、ご自由にどうぞ。
知らん振りをして突っ立っていると、レイチェルが提案した。
「ねえ、ンドペキ。あなたの作戦室、貸してくれない? ちょっと彼と話があるの」
「え?」
「ね、お願い」
「あの部屋は、我が隊の中枢です。畏れながら、レイチェル閣下といえども、お貸しするわけには参りません」
「そこを、なんとか。ね、ンドペキ」
芝居じみている。
レイチェルも分かっているのだ。
俺があの部屋だけは絶対に使わせないことを。
「だめかあ。じゃ、ロクモンは?」
「呼びましょう」
ロクモンなら自分の部屋を貸そうと言うかもしれない。
「ねえ、ハワード。ンドペキってさ、こういう人」
レイチェルはそういって、笑ってみせた。
言われた方のハワードは、反応のしようがないのか、冷たい視線をチラリと送ってきただけだ。
「こういう人だから」
レイチェルは再びそう言って、今度はこちらに向かって微笑んだ。
ふん。
どうでもいいが、ハワードよ、早く帰ってくれ。
おまえは知らないだろうが、おまえの顔は見飽きたんだよ。
ロクモンは自分の部屋を喜んでレイチェルに提供した。
そこでレイチェルがハワードと話したのは、きっかり二分。
まずレイチェルが部屋から出てきて、ロクモンに礼を言った。
続いて出てきたハワードは、かなり緊張した面持ちだった。
「ねえ、ンドペキ」
「はい」
ハワードの前では、友達言葉ではなく、上官としての言葉遣いにしようと努めている。
この男がどんな目的で来たのか分からない以上、念のため。
「ハワードを、しばらくここに置いてくれない?」
「はあ?」
さすがにンドペキはレイチェルの提案に面食らった。
アンドロだ。
敵かもしれないのだ。
もちろん、アンドロにも二派あることは聞いている。
このような対応をレイチェルがしているのだから、味方だと思ってよいのだろうが。
しかし……。
黙っていると、ハワードが言った。
「歓迎されていないみたいですね」
「うーむ」
当たり前だ。
アヤと一つ屋根の下で眠ることになる。
しかもチョットマもいる。
なんといっても、レイチェルもいるのだ。
超の付く美女隊員さえいるのだ。
愛や恋に飢えた、いや、その作法や礼儀さえも知らない、積極行動派のアンドロを受け入れることは問題を生じさせないとは限らない。
そして、隊員達も奇異の目で見るだろう。
はっきりと抵抗感を示す者もいるだろう。




