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443 「愛」や「恋」の練習台

 KC36632と入れ替わりに、洞窟にもうひとりの訪問者があった。


「ハワードと名乗っています!」


 アンドロは、一人用の飛空挺で乗り付けていた。

 本当にやってきたのだ。


 アヤは会うという。

 案内するしかない。


 通路を行く間に、チョットマとすれ違った。

「あっ」

 チョットマが小さく声をあげた。


「やあ」と、ハワードが笑顔を見せる。

「ん?」と、ンドペキは思ったが、すぐに思い出した。



 チョットマが話してくれたことがある。

 付け回してくる男がいると。

 そしてその男は、サリの部屋も訪ねているようだと。

 その男とは、ハワードのことだったのか!




 ンドペキは何食わぬ顔で、アヤの部屋に案内した。


「おおっ、バード! 心配したよ! 無事でよかった!」

 ハワードの第一声。


 それからふたりは、互いをねぎらう会話を続けた。

 当たり障りのない話だった。

 その間、五分ほど。


「じゃ、長官のところにも寄って行くよ」

 そういって、ハワードが部屋を出た。



 恋人同士というような甘い再会ではなかった。

 やはり、アヤを愛しているというのは嘘だった。

 アンドロの恋とは、そういうものなのかもしれないが。



「レイチェルの部屋は隣だ」

「はい」

 と、ハワードは姿勢を正した。


「レイチェルが誰か、知っているのか?」

「むろんです」

 ノックする。



「ハイ! ハワード!」

 応対に出たレイチェルは上機嫌だった。

「無事だった?」

「はい。このとおりです」



 ハワードはアヤのときより、よほどリラックスだ。

 言葉遣いは上官に対するものだが。


「長官もご無事でなりよりです!」

「心配掛けたわね! 来てくれてうれしいわ!」



 レイチェルに拒否さるれぞ、というのは杞憂だった。

 ハワードが正しかったというわけだ。


 面白くないが、これでハワードがアヤに近付いた理由がはっきりした。

 アヤがいうように、単に「愛」や「恋」の練習台だったわけだ。

 それが分かっただけで、十分だ。 



 チョットマやサリに近付いていたのも、その口だろう。

 行動力には驚くが、この男の「愛」や「恋」の中身は薄いもの。

 レイチェルとの関係は不明だが、所詮は底の浅いもの。


 しかし、レイチェルの反応は気になる。

 まるで、旧知の間柄のような歓待ぶり。

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