44 出生の記録、再生の記録、共にない
探偵から、連絡があった。
「早いな」
「成果の乏しい仕事は、さっさと片付けて、次の仕事をしろってことだ」
「では、聞こう」
ニューキーツに住むサリという人物は三人。
一人は政府機関に勤めているアンドロで年齢は二十二。正確にはサリーという。
もう一人は囚人。
服役十年のベテランだ。こちらはマトでザリという。
最後の一人は現役の兵士。
名前はサリ。
誰の情報を聞きたい?
「兵士を頼む」
「一人だけでいいのか? 三人分聞いてもお代は一緒だぞ。特にマトで十年の服役ってのは珍しいぞ」
「服役中に兵士として、外に出られるのか? しかも数年間」
「ありえない」
「では、現役兵士の方を」
探偵の情報は貧弱だった。
本名は不明。
女。
年齢は二十。
「肌の色は白で瞳は濃いブラウン。ま、珍しくもないな。髪は金髪。というより白銀に近い。これは珍しい」
「フム」
「人種はメルキト。しかし、出生の記録、再生の記録、共にない」
「ん?」
「普通は直近の再生年月日がわかるんだが、今回はない」
「メルキトで二十歳なら、普通は数年前に再生されているはずだ。それに、今はどうなっている。十日ほど前に死んだのかもしれない」
「疑問は預かっておく。先に進むぞ」
両親は不明。
一応、ホメムとマトの間に生まれたことになっているが、真偽は怪しい。
非常に珍しいケースだからな。
両親の名は、父親の方がマトでシーザー、母親の方がホメムでアントワネット。
これも怪しい。きっとでたらめだろう。
「それは通称名か?」
「サリ本人の本名がわからないのに、親の方がわかるはずがない」
探偵がサリの住所を読み上げた。
「もちろんIDは不明。といっても、わかっていてもこれは教えられないがな」
探偵は、自分の音声は監視システムにスルーされるようになっているが、万一ってこともある、と弁解した。
「さて、先の疑問だが。どうぞ」
「まず、再生記録がないとは、どういうことだ?」
「言葉通り。記録はない。再生されたことがないという意味ではない」
「調べられなかった、というべきではないかな」
「私の調査力は、業界随一だ」
「それは失礼した。しかし、業界なんてものがあるのか?」
「あんたは私の友人であり、顧客だ。しかし、答えられないこともある」
ため息が出そうになった。




