435 誰かの恨みが暴発して
イコマは、今あったことをアヤに伝えた。
隠していても、奴はやってくる。
そのとき驚かせるより、今、アヤがどうしたいかを聞いておく方がいい。
しかし、アヤは、ふうんと言っただけだ。
「どうする? 来たら、会うのか?」
「そうねえ……。まあ、会うだけ会おうかな……」
なんとなく曖昧だが、通せということだろうと判断した。
アヤが溜息をついた。
「疲れた?」
「ううん。そうじゃないけど、ここ数日、胸騒ぎがするのよね」
「胸騒ぎ?」
アヤがあっさり話題を変えた。
ハワードのことはどうでもいいのだ。
枕元に置いてある聞き耳頭巾の布を撫でた。
「よくわからないんだけど、よくないことが起こるような気がして」
「よくないことって?」
もう立て続けに起きている。
アヤ自身もそう。
一命は取り留めたものの、レイチェルもろとも死にかけた。
ハクシュウが死に、プリブが死んだ。
街はアンドロに乗っ取られ、ンドペキ隊は洞窟に篭り、先の見えない状態が続いている。
これ以上、まだよくないことが起きるというのか。
「アンドロが攻めてくるとか?」
「ううん。そういうことじゃなくて、誰かの恨みが暴発して、とんでもないことが起きる、そんな感じの……」
「恨み、か」
「なんとなく。しかも、街ではなく、この洞窟で……」
洞窟で、という条件なら、恨みという言葉に最も近いところにいるのはレイチェルか。
隊員達の間にそれはないと思う。ロクモンでさえ。
レイチェルとチョットマ。
しかし、恨みという言葉が当てはまるような強い感情ではない、はず……。
あるいは、スゥの周辺で……。
まさか、ハワードがその災いを連れてくる?
何が起きるのか知りたい。
しかし、アヤにはこう言った。
「気にしない、気にしない。大怪我をして疲れてるんだから、取り越し苦労さ」
「そうね……」
「それに、ハワードが来ても、疲れていたら会う必要はないよ。追い返せばいいんだから」
アヤがほのかに笑った。




