433 なにしろレイチェル研究家
「ところでさ、レイチェルは友達といえる人が少ないそうだね。友達どころか、親しく話をできる人自体がほとんどいないって」
「そう。彼女は孤独」
「ホメムだから?」
「うん。そういうことになるかな。彼女には人類を絶やさないっていう、重い重い責任があるから」
「そうだね」
「私にも、家族はとか、子供はとか、よく聞くよ」
「ふうん。僕もアヤちゃんの夫とか子供のことは気になったけど、もうそれは過去のこと。どうしても聞きたい気はないけどな」
「それが普通の感覚。でも、レイチェルは違う。彼女は、今まさにその問題に直面してるから」
「ん? ん? ということは、好きな人がいてる?」
「わからないけど……。多分、いてると思う……」
「へえ! 誰?」
「さあ」
「なんだ。聞いてみたことないの? 親友なのに」
「親友かあ。そうなんだろうけど、さすがにね」
親友と呼べる友がいても、ホメムであり、長官であるレイチェルに聞くことではないのだ。
寂しいことである。
「アヤちゃんの他に、サリという兵士とも仲がいいんだって。知ってた?」
「サリ?」
「東部方面攻撃隊の」
「あ、そか。ごめん。私、何も調べられなかったね」
「ううん。いいんだよ。もう」
「どうやって知り合ったんだろ。不思議ね」
「ダンスのレッスンに街に出てるくらいだから、機会はあったんじゃないかな」
「まあねえ。でも、おじさんはなぜそれを知ってるの?」
「ロクモンから聞いたんだ」
アヤがフッと笑った。
「もしかすると、ハワードは知ってるかも。なにしろレイチェル研究家だから。今度は、私からサリに乗り換えるかもしれないわね」
「街の兵士に?」
「彼なら、そんなことはものともせずにアプローチするわよ」
ハワードの、アヤを愛している、とはこの程度のこと。
だから最近、顔を見せないのだ。
もし今度来ることがあれば、これまで以上に冷たく追い返してやろう。
が。
ニューキーツのコンフェッションボックスから、そのハワードが訪ねてきた。
残念ながら、居留守は使えない仕様だ。




