429 おぬしは選ばれたひとり
ロクモンの話の最後に出た「サリ」という名に驚いた。
「サリ?」
「おぬしの隊員ではござらぬか」
サリがレイチェルと親しく話をする仲だとは知らなかった。
「サリは死んだ。レイチェルは知っているのか?」
これにはロクモンも驚いたようだ。
「おお、そうでござったか……」
「今回の戦闘で死んだのではない。この事件が起きる少し前だ」
少なくとも防衛隊が関係していないと知ってか、ロクモンは微妙にほっとしたような顔をした。
「おぬしはその中のひとり」
「ん?」
「選ばれたのじゃ。ホメムであるレイチェル閣下に」
ンドペキは、ハクシュウに同じようなことを言われたときと違って、今回は素直に名誉なことだと思った。
しかし、それでは最初の自分の問いに対する答えになっていない。
「それは光栄なことだが、なぜ、シェルターの話を俺にしてくれなかったんだろう」
ロクモンは、先ほどまでとの饒舌とうって変わって、冷たい口調になった。
「さあて。ホメムであるレイチェル閣下が、言わないでおこうという気になったのでござる。後は自分でお考えなされ」
答が見えないまま、ンドペキはレイチェルと会った。
レイチェルは、シェルターや親衛隊や騎士団について、一切話そうとしなかった。
サリについても、口を閉ざしたままだった。
ロクモンが、シェルターに立て篭もっている親衛隊と連絡を取り合おうと進言しても、レイチェルはひと言も発することはなかった。
ンドペキの家族はどんな人たちだったの、今も連絡を取り合ってるの、などと無意味な話をして煙に巻くだけだった。




