425 初耳
ンドペキは、レイチェルがチョットマにきちんと謝ります、と言ったので、それ以上追求するのはやめた。
ただ、話の成り行き上、聞いておきたい。
「個人的なことなら聞きはしない。ただ、チョットマはあんたの期待に応えられなかったということなんだな」
それがどんなことであれ、もしチョットマがそのことに気付いていないなら、長官からすれば落ち度ではないか、ということなのだろう。
しかしレイチェルは、首を横に振った。
「私の期待は、私だけのもの。彼女はそれを知りもしない。だから、彼女はなにも失敗なんてしていない。私の思ってもみなかった方向に、進んでしまっただけ」
ピンと来る話ではなかった。
「よくわからないが、彼女に落ち度がないのなら、この話は終わりだ。ただ、無用なことをあいつに言わないでくれ」
部屋を出ようとすると、
「チョットマのこと、どう思ってるの?」
と、脱力してしまうような言葉が追いかけてきた。
「部下ですから」
ンドペキはそれだけ言って退散しようとしたが、さらに声。
「チョットマがあなたのことをどう思っているか、知らないの?」
「仲間ですから」
今度こそ、ンドペキは扉を開けた。
「私が、そのことをどう感じているか」
レイチェルのその問いかけの後に、上官として、という言葉が付いているような気がしたが、そのまま部屋を出た。
チョットマの部屋の前に立って、ンドペキは自分でもげんなりした。
今の話を、どう伝えればいいのか。
気にするな、おまえは必要とされている、と言えば納得するだろうか。
役目といえばそれまでだが、落ち込んでいるチョットマに掛けてやるいい言葉は思いつかない。
「ンドペキ」
振り向くと、ロクモンだった。
「話がござる」
先ほどの話の続きならごめんだ。
「今後の作戦につき、耳に入れておきたきことがござる」
ンドペキはチョットマと話をするのを後回しにして、自分の部屋にロクモンを誘った。
「レイチェル閣下から聞いているかもしれぬが」
と前置きをして、実は、とロクモンが切り出した。
「長官の居住エリアから通じている専用のシェルターがござる。そこに、レイチェル騎士団を含む親衛隊が残っているという。そんな噂、聞いておらぬか?」
初耳だった。




