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420 俺を安心させてくれ

 ふと思った。

 ちょっと待てよ。


「ということは、俺はイコマじゃないこともありうるよな。今は、自分は生駒延治だと思っている。心の底から信じて疑わない。しかし、それは違っている場合もあるってことだよな」

「ないよ。そんなこと」

「でも、どうして俺、ん、つまりンドペキがイコマだとわかったんだ? 人違いってことも、あるんじゃないか?」



 ユウが笑い出した。


「なに言ってるねんな! ほんまにノブは。この期に及んで。違和感でもあるん?」

「全くない。おれはイコマだ。しかしそう信じているのは、その記憶が脳にインプットされたからじゃないのか?」


 ユウがまた笑った。


「間違いないって」

「でも、どうして間違いないってわかるんだ?」



「私が海にいて、大阪で一緒に暮らしたノブの記憶を見つけ出したとき、それを辿っていくとンドペキと名乗っているあなたに繋がっていた。それで十分とちがう?」

「それだけのことで……」

「嫌なん? 生駒延治であったことが」

「とんでもない! 俺はイコマだ。しかしだな!」


「面倒な人やね」


 ユウの笑みが大きくなる。


「昔から、そういう人やったけど。じゃ、教えてあげる。この話は最後にしようと思ってたんやけど」

「教えてくれ。そして俺を安心させてくれ」




「わかった。ねえ、ンドペキ、あなた、聞き耳頭巾を使ったやん。そのとき、何を見て、何を聞いた?」

「あっ」

「あの記憶はノブのもの。種も仕掛けもない聞き耳頭巾を使ったことで、あなたは自分の記憶を少しだけ思い出した。それが決定的な証拠。それがあったからこそ、私は今日の日を迎えることができた。そういうことなのよ」




 ンドペキは、まざまざとあの夜のことを思い出した。


 暗い神社で、アヤと……。



 そうだ!

 スゥと一緒に!


 森の中、スゥはずっと唇を寄せて、俺の記憶が蘇るようにサポートしてくれていた!




 そうだ!


 スゥは!



 ンドペキは、セラミックのテーブルを振り返った。

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