417 最後まで聞くのよ
でね、そのとき、私はノブのクローンを作った。
「なっ!」
「クローン!」
フライングアイとンドペキが同時に声をあげた。
「ふたりが話すとややこしいから、ンドペキの方のノブだけにしてくれる? ふたりとも今は同期していて、一緒のことやから」
「……わ、わかった」
私は地球に帰ってきたとき、必ずノブを探し出すつもりだった。
そのとき、ノブがこの世にいなかったら、私はどうしていいかわからない。
だから、クローンのノブを作ってから行くことにした。
散々、迷ったけど。
「クローン……、俺が……」
「最後まで聞くのよ」
地球に帰ってこれるのは、数百年も先のことになるかもしれない。
それはわかっていた。
でも何らかの形で、ノブが迎えてくれることが私には重要だった。
ノブのいない地球に帰ることの辛さを考えると、クローンであれなんであれ、私を待っていてくれる人がいて欲しかった。
「俺はそのとき、アギになっていたんじゃないのか?」
「そう。すでにアギやった」
しかし、当時のアギはトラブル続きだったよね。
システムが脆弱で、欠点も多かった。
私は、万一の時を考えてクローンを保険として用意しておいたのよ。
「そう。ンドペキ、あなたはクローンのマト」
違法であろうがなんであろうが、私にはそれしかできなかった。
むしろ私にしかできないことでもあった。
光の柱の守人として、それらの技術を行使できる地位にあったから。
ンドペキは腹の底から力が抜けていくような気がした。
クローン……。
人の手によって、人工的に作られた人間。
再生とは違って、もともとが人工人間だったのだ。
何ということだ……。
俺は……。
ンドペキはしゃがんだままだったが、そのまま岩の床に崩れ落ち、ベトベトの粘液となって、岩に染みこんでいきそうな気がした。




