4 ディナー、考えとく
「ンドペキと食事か……」
サリから、言葉尻の微妙な声が返ってきた。
どう応えるのがいいか一瞬逡巡したが、やっぱり止めだ、と言えるものではない。
「どう? 別に今日でなくてもいいけど」
こう押しておけば、今、サリが逃げ帰ることはないだろう。
もし、踵を返すようなら、またの機会を待てばいいし、そもそもこの女でなくてもよいのだ。
サリは考え込んでしまったのか、またも沈黙が流れた。
相変わらず、曇った空に砂塵が舞っていた。
「まずいのがいる」
上空に巨大な影を認めた。
水平距離にして五キロほど先、高度約千五百メートル。
「遠回りするしかないな」
通称、ドラゴンと呼ばれる鳥が弧を描いていた。
めったにお目にかかることはないが、伝説上の竜などではない。超大型の海鷹だ。
図体がでかい割りに敏捷で、あっという間に背後に回られてしまう。
この鳥がどうして生まれたのか、知りはしないが厄介な生き物であることに違いはない。
「ディナー、考えとく」
サリはそんな言葉を送ってきた。
そんなことより、今はぐんぐん距離が縮まりつつある目の前の鳥をどうするか。
俺とサリの二人で対峙するには荷が重い。
飛行系の戦士がいないパーティでは戦術に限界がある。
もともと、飛行系の戦士など、世界中を探してももうめったにお目にかかれないが。
丘陵部での戦闘は分が悪い。
むやみに攻撃を仕掛けてくるやつではないが、虫の居所が悪ければ執拗に追ってくるだろう。
倒せたとしてもなんら得るものはないし、ここでエネルギーを消耗したくはない。
俺はすぐさま大きく進路を変えた。
あいつからは、こちらが見えているだろう。派手な砂塵を巻き上げている。
俺は愛用の高光沢メタルの黒い装甲。サリもいつもの鏡面バトルスーツ。
反射した光は鷹の目に届いているはずだ。
鳥は旋回をやめ、こちらを追うがごとくにすっと横滑りしたかと思うと、一気に高度を落としてきた。
俺は鳥からできるだけ離れようとスピードを上げた。
鳥は追ってくる気はないようで、再びあっさり高度を上げていくと、元のようにゆったりとした旋回に戻った。




