表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
398/481

398 チョットマ、もうやめよう。ね

 ロクモンが洞窟にやってきてから、幾日か経った。



「おい、金管楽器」

 金管楽器とは、新しく付けられたチョットマのあだ名である。


「また、あんたか」

 部屋から顔を出すと、ネールが笑っていた。

「またって、失礼だな。様子を見に来てやったのに」

「来なくていいよ」


 そう言いながら、チョットマはまんざらでもない顔をしているだろうな、と思った。


 夕食時に、またレイチェルとやりあってしまったのだ。

 いざこざは、他愛のないひと言がきっかけだった。



「あなた、もう少し静かにできない?」

 悪ふざけが過ぎた隊員にそう言ったレイチェルは笑っていた。

「すみません!」

 隊員は素直に謝ったが、

「友情を育んでいるのにね」

 チョットマが呟いたひと言がレイチェルの癇に障った。


 レイチェルが呟き返した。

「友情?」

 チョットマにすれば、聞き捨てならない。

「レイチェル。それ、どういうこと? 今、鼻で笑ったよね」


 聞き流しておけばよいものを。

 そう思うが、いつものことながら、先に声を発してしまっていた。



 その後の展開は、いつもどおり。

 言葉の応酬。


 チョットマは常に分が悪い。

 レイチェルの威厳に、自分の語彙の少なさが屈服してしまう。

 最終的に、互いにごめんなさいとなって収まるのだが、昨夜は最後のレイチェルのひと言が利いた。



「あなた、私とかなり違うよね」


 収まりかけていた怒りが再燃してしまった。


「はあ? 当然でしょ! なぜ、あなたと一緒でなくちゃいけないの!」


 レイチェルは、しまった、というような顔をした。


「私が、あなたと同じでなくちゃいけない理由、教えて欲しいわ!」

 矛を収めなくては、と自分ではも思うが、その手順が分からない。


「あなたは街の一番偉い人。私はンドペキ隊の一隊員。違ってて当たり前でしょ!」



 ンドペキはじめ、隊員たちが仲裁に入ってくれようとするが、怒りはなかなか収まらない。

 レイチェルが激昂することはない。

 半ば微笑みながら、あるいは威圧しながら、短い言葉をぽんぽんと投げてくる。


「ごめんなさい。言い過ぎたね」

「言い過ぎって、それじゃやっぱり、そう思ってるんじゃない!」

「ううん。少し意味が違うのよ」

「じゃ、どういう意味!」

「あなたは、私の、ぶ、っと、ね、チョットマ、もうやめよう。ね」

「あなたの部下だから、あなたと同じようにしなくちゃいけないっていうの?」

「だから、そういう意味じゃないって。ごめん、謝るから」



 そんなやり取りで、毎日の恒例になった全員での夕食会をぶち壊してしまったのだった。

 最後はパパが目の前を飛び回って、「二人とも、もう、やめなさい」って言ってくれたけど。



 ネールが、廊下に突っ立っている。


「入って」

「えっ」

「さ」


 チョットマは、我ながら大胆かな、と思ったが、ネールを部屋に入れた。

 部屋といっても、ベッドと椅子がワンセットあるきり。

 ロクモンの隊には女性がいなかったので、チョットマは相部屋を免れている。



「じゃ」

 と、おずおずと入ってきた。

 ネールに椅子を勧め、自分はベッドに腰掛けた。


「生まれて初めてだな。きっと」

「そうね。私も」

 こんな風に、人の部屋に入ったり、入れたりするのは。


「あっ、違う。私はプリブの部屋に入ったんだ。ンドペキの部屋にも」

「ああ」

「でも、勘違いしないでよ。あなたを部屋に入れたからって」

「それは、こっちの台詞でもあるな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ