356 一分一秒でもひっついてたいから
アヤが見つかってから今までのことを話した。
ユウからは、家を出て行ってからのことを聞いた。ごくごく少し。
長い話はしない。
これからはいつでも会える、とユウが言うから。
思い出話も、六百年を埋める話も、まだ不要。
声を聞き、髪や肌に触れ、目を絡め、キスしているだけでいい。
「それで、おまえはいったい、何やってるんや?」
「ニューキーツの代表やねん。今の名前はJP01」
シリー川対岸のコロニー。三千余名のパリサイドのトップ。
「ほう! 偉いじゃないか!」
「どんなに頑張ったか。でも、その話はまたいつか」
「うん。でもおまえ、あの教団に入ってたのか?」
「まさか! 神なんてものは、君主が民衆をたぶらかし、押さえつけるために考え出したもの。いつもノブ、そう言うてたやん!」
「じゃ、なぜ、パリサイドなんだ?」
「それは聞くも涙の物語。今日はしたくないよ。今日はバラ色の一日なんやから」
そう言ってユウが、絡めた腕にクッと力を込めた。
「この街ではトップやねんけど、なんでも自由かというと、違うねん」
「ま、そうかもな」
「地球に帰還したパリサイド、総勢約三万。全体のトップは宇宙空間に陣取ってる。私は単に中間管理職」
「中間管理職って、また懐かしい響き」
「だから」
「だから?」
「政府軍にしろアンドロ軍にしろ、どっちかに加担することはNG、そういうことになってるねん」
今、地球上のすべての街が大混乱に陥っている。
パリサイド容認派、拒否派に分かれて、紛争にまで発展している街がたくさんあるという。
パリサイドとしては、どちらにも肩入れしない。
決着がつくまで見守る、という方針。
「でも、圧力はかける。いい加減に決めてやってこと」
「しかしなあ。地球人類にできるかな」
「それに、約束の会談はすっぽかされる。それなりに制裁は加えないとね」
「つまりは、勝った方と交渉するってことか?」
「さあね。実際は交渉の余地はないねんけど。こうしてもう暮らし始めてるし」
ユウはこの話をあまりしたがらなかった。
それはそうだろう。ここまで話してくれただけでも、うれしかった。
「なにか、飲む?」
「ううん。いい。一分一秒でもひっついてたいから」




