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37 記憶 狂気の行軍

 認めるわけにはいかぬ、と知事はしつこく食い下がっていたが、自分のスケジュールが押してきたのだろう。やがて諦めて、

「必ず、十分明るいうちに県庁にお戻りください」

 と、言い残してジープに乗り込んだ。



 生駒と綾は、歩き難い山道を登り始めた。

 そういうこともあろうかと、それなりの靴で来てはいたが、これほど暑いとは。

 真夏かと思える気温。

 しかも、暑さは一歩ごとに強くなっていく。



 知事は、強く反対はしたものの、ジープに積んであった非常用の飲み水と食料を持たせてくれていた。

 かろうじて一日分ほどだが、生駒は知事の好意がうれしかった。

 立場上、反対せざるを得なかったのだろうが、内心は喜んでいたのかもしれない。

 あるいは、もはや、すべてのことに諦観を抱いているのかもしれない。


 知事のあの様子では、救援のために自衛隊を寄こすかもしれない。

 生駒はそれはそれでよいと思った。

 それに乗じて、綾を無事に帰そう。

 これから向かう先は、地獄か天国か。それに、この暑さである。

 少なくとも、まともに帰ってこれる場所でないことだけは確かだった。


 狂気の行軍。

 自分ひとりで十分だった。


 この先で、どうしても確かめたいことがあるのは自分なのだから。

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