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324 ンドペキの代わりなんて、どこにでもごろごろ

「ねえ、パパ。それから、私、友達、見つかると思う?」

「何を言うのかと思ったら。もう、たくさんいるじゃないか」

「そうかな」


 チョットマが、自信たっぷりに笑った。

 自分でもわかっているのだ。


「スゥも、ネーロも、スジーウォンも、プリブもスミソも」

「やっぱり! だよね!」

「もしかするとライラも」

「ええっ!」

「それにンドペキもね」

「うん!」





 ねえ、チョットマ。


 君に幸あれ。


 イコマとンドペキは、心の底から、チョットマの幸せを祈った。


 六百年前、アヤと一緒に住み始めたころ、彼女に対してそう思ったのと同じように。

 血の繋がりはないけれども、自分の娘だから。



「新しい恋人も、すぐにできるさ」

「だといいけど!」

「ンドペキの代わりなんて、どこにでもごろごろしてるよ」

「あーっ、パパ、ンドペキの悪口を言ったあ!」

「悪口じゃないさ。事実だよ」




 レイチェル。


 かわいそうな娘。


 課された責務に押し潰されてしまった若い命。

 あまりにもむごい、短い生。


 いや、レイチェルの死は未確認。

 とはいえ……。

 刺され、渦を巻いて流れ下る地下水流に巻き込まれては……。

 すでに海に流され……。



 レイチェルを思うとき、だれしも悲しみと寂しさの葉っぱの上に、後悔の涙を一滴落とす。

 ひとりのうら若き女性として、彼女を思ったことがあったろうか。

 彼女の心を、我がこととして、あるいは我が娘のこととして、受け止めたことがあったろうかと。



 しかし、洞窟の中で、レイチェルが話題になることは多くはない。

 ハワードであれ、ロクモンであれ、そしてアヤであれ。

 チョットマの心情を慮って。




 「人」とは、なんだろう。

 イコマは、そう考えずにはいられなかった。



 パイサイドの帰還によって、そしてアンドロの蜂起によって明らかになったこと。


 まだ、ワールドが一枚板になっていなかったこと。

 新しい地球人類のあり方を提示するまでには至っていなかったこと。


 多様な人が暮らしていることを知った。

 感情を持とうとしている人造人間アンドロ。

 そしてクローンが、人として、自分がクローンであることを知らずに暮らしている。


 アギやマトやメルキトはもちろんのこと、パリサイドとの融合、アンドロとの融合、そして世に隠れたクローン達との融合の姿は、未来の人類社会の中に見えてくるのだろうか。





 あの推理会議から、五日が経つ。

 いよいよ、明日から、新しい一章が始まる。

 ニューキーツの街の奪還に向けて。



 エーエージーエスに籠った荒地軍は今。

 そして本当に敵なのか。



 KC36632が殲滅した軍はどこの所属のものだったのか。



 そもそもタールツーとは。

 子供を産んだ?

 ベールに包まれたアンドロ……。

 人としての感情を持ちたいと強く願っているアンドロ……。

 彼女がやりたいこと。得たいもの。

 なんなのだろう……。



 チョットマをつけ狙うクシとは。

 なぜ、チョットマだけを襲う。



 レイチェルのシェルターはいずこに。

 ロクモンが教えてくれた出入り口の場所。

「ヘスティアーに保護されし孤児、生贄を喰らう」

「ラーに焼かれし茫茫なる粒砂、時として笑う」

 とは。



 ユウが言った「呪われた体」

 なぜ、そう言ったのだろう。

 パリサイドの身体に隠された秘密を、いつかは知りたい。

 ユウをもっとよく知るために。



 オーエンの目論見とは。

「やつらが地球に帰ってきた! すぐにあれを再開せねば!」

 やつら、とは。

 あれ、とは。

 オーエンとホトキン、二人で何をしようとしているのだろう。




 そして何より、レイチェルの行方を。

 もし亡骸となって海に沈んでいても、見つけ出し、弔ってやらねば。

 思い出となった洞窟で、あるいはンドペキの部屋の前で、彼女を偲びたい。




 そんな疑問。

 謎。

 確かめねばならぬこと。

 やらねばならぬこと。


 洞窟に篭っていては、何も見えてはこない。


 街の奪還に向けて、行動あるのみ。

 そんな気分が洞窟内に静かに沸騰していた。


 ここに生まれた信頼の太い絆。

 隊員たちの明るさ。


 これがあれば、勝てるのではないか。

 街の奪還の先に、自由で愛に満ちた新しい世界を切り開けるのではないか。

 イコマは、ンドペキはそう思うのだった。




「ねえ、チョットマ」

「なあに?」

「……きれいだよ。最近、特に」

「うわおっ! パパが私を口説いた!」



おしまい


次編

「サントノーレ ------(美少女戦士 翼に包まれての段):トゥシー・イントゥ・ザ・ヒューチャー第2話」にお進みくださいませ(Nコード N7425BM)

最後までお読みくださり、ありがとうございました。


この「ニューキーツ」は、長編「トゥシー・イントゥ・ザ・ヒューチャー(4部作)」の序章ともいえる位置づけです。


次の編では、いくつかの謎や疑問を抱えたまま、東部方面攻撃隊は街を奪還するべく、洞窟を出て行動を開始します。


サントノーレ ------(美少女戦士 翼に包まれての段):トゥシー・イントゥ・ザ・ヒューチャー第2話

なろうNO n7425bm

やはり、ミステリー風味を加えたSFです。


まだ地球上?が主な舞台ですが、別次元を垣間見、最後には……。

ンドペキに、チョットマに、何が待ち受けているのか、お楽しみに。


どうぞ、引き続き、お付き合いくださいませ。

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