314 そもそも、サリの失踪事件
いよいよ最終章「解決編」となりました。
一応、ミステリー小説ですので。
完結まで、あと少しです。
作戦室。
集う面々は、ンドペキ、スジーウォン、パキトポーク、コリネルス、ロクモン。
チョットマは膝を抱え、隣にはアヤ。
スゥは部屋の壁際に呆然と立ち、部屋の隅に蹲るハワードは頭を抱えている。
シルバック、スミソ、ネールら準幹部クラスの隊員数名。ジルやイナレッツェもいる。
総じて硬い表情だ。
そして、中央のテーブルの上には、フライングアイ。
「ヘッダーもマスクもとって。でなければ、こういう話はできない」
誰に指名されるまでもなく、イコマは、そんな言葉で話を始めた。
作戦会議ではない。
数時間前に起きたレイチェル殺害事件を解明するための会。
ならば、ンドペキとして話すより、イコマとして話した方が、場の冷静さを保てるだろう。
レイチェルの死の最終的な責任者は、洞窟の長であり部隊の長、ンドペキなのだ。
それより、表情のないフライングアイが淡々と議事を進めた方がいい。
「レイチェルは刺されて地下水系に消えた。死んだと決まったわけじゃない。薄いものの、望みがないわけではない」
レイチェル殺害事件というにはまだ早い。
死体が発見されたわけではない。
しかし、ここをいち早くクリアにしておかねば、今後の洞窟の運営、そして行動に支障をきたす。
イコマは、望みはあると言いつつ、レイチェルは死んだものとして話すつもりだった。
ロクモンは、そんな前提の話は聞きたくないというかもしれないが、それはその時。
「スゥ、座って」
スゥは素直に従って、アヤの隣に座った。
テーブルについている者はいない。
全員、床に座り込んで、テーブルを取り囲んでいる。
「そもそも、サリの失踪事件」
イコマは何とか冷静でいようと思った。
あえて間延びした声で話そう。
緊張で張り裂けそうなこの場の空気を少しでも緩和するために。
「あれは、どういうことだったのか。ここから紐解いていかねばならない。幾つかの謎は、あの事件から始まっていると思う」
ンドペキはもちろんのこと、誰も異議を挟む者はない。
「そのために、幹部以外の方々にも参加してもらった」
チョットマ。
真っ青な顔でンドペキを見つめている。
彼女は、こんな状況になってさえ、ンドペキを心配している。
胸が傷む。
「ハワードに、僕は謝らなくてはいけない。彼は、正真正銘のレイチェルの部下。というより信奉者と言っていいかもしれない。レイチェルを追って水流に飛び込むなんて、誰もができることではない」
ハワードは、顔をあげようとしない。
依然として頭を抱えたまま。
時々、すすり上げる音が聞こえる。
「謎の解明を作戦会議の前に行うのは、この結果如何によって、作戦内容が異なるかもしれないと思うから。隊幹部の方々はしばらくお付き合いくださるよう、お願いします」
アヤとスゥは手を握り合っている。
表情に緊張が漲っている。
特に、親友を亡くしたアヤは、必死で涙を堪えている。
「うまく話せないかもしれない。まどろっこしい話になるかもしれない。実は、僕もまだ頭の中が完全に整理できているわけじゃない。なにとぞご容赦を」
自分とンドペキが、そしてJP01とスゥが同期していることに気付かれぬよう、話を進めていかなければならない。
「まずは、目に見える形で起きたいくつかの事柄を、時系列に並べて整理してみよう」
サリの話をするに当たって、イコマには自責の念がある。
もっと早くに気付いておれば……。
そうすれば、レイチェルの死は避けることができたかもしれない。
暗澹たる思いが胸を掠める。
その気持ちが収まるのを待って、イコマは話し始めた。