312 間合いを詰められるな!
「撃て!」
左遠方のパキトポーク隊が攻撃を開始した。
敵もすぐさま応戦してくる。
順に、右手前のコリネルス隊、右遠方のスジーウォン隊、左後方のパキトポーク隊、そして最後に中央のンドペキ隊が、それぞれきっかり三秒の間をおいて砲火を放った。
五秒撃っては、二秒で左へ移動。
その繰り返し。
二秒待つのは、エネルギー充填のためだし、移動するのは敵の的を絞らせないようにするため。
二秒の移動で、概ね二百メートル移動する。
敵陣を突き抜けて味方を誤射してしまうこともない。
ハクシュウの指揮の元、訓練を重ねてきたし、実戦でも何度も経験済み。
ロクモン隊は、高台から中心部に向かって、砲撃を浴びせている。
「間合いを詰められるな! 敵は数が多い! 五キロの距離を保て!」
チョットマは、相手の位置を示すオレンジの点がひときわ輝くやいなや、位置をずらし、攻撃を避けた。
こちらに照準が合った敵を示すランプ。要注意。
もう、あたりは何も見えない。
見えるのは様々な色の光の渦だけ。
敵も味方も、ゴーグルのスコープに示される小さな点のみ。
音声も聞き取れない。ゴーグルモニタに流れる文字のみが頼り。
誰が生きていて、誰が死んだのか、わからない。
戦闘の終了は、敵か味方の攻撃が止んだとき。
五秒撃って左方へ二秒移動。
それを三回繰り返すと、今度は右へ移動する。
二回目に左へ移動したときだった。
うあっ!
これまでとは全く異なる強い光が、前方に降り注いだ。
スコープに映っていた、敵の点の群れが一瞬の内に消えた。
と同時に、敵の攻撃が止んだ。
「攻撃停止!」
ンドペキの声が聞き取れる。
「全員、待機!」
一瞬の内に、あたりは夜の闇に包まれた。
見えるのは、あちこちで燃え上がった炎と、エネルギー弾の軌跡、光の帯が漂うのみ。
巻き上げられた人頭大の岩が、大量に降り注いでいた。
戦闘はわずか十四秒足らずで終結した。
照明弾が撃たれた。
「うっ」
チョットマからも、他の隊員からも呻き声が聞こえた。
「すごいな」
すさまじい土煙が舞っていた。
その中に、とてつもない巨大な穴ができていた。
まるで隕石が落ちたかのようなクレーター。
「あっ」
上空にひとりのパリサイドの姿があった。