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311 経験にものを言わせろ!

 パーティどころではない。

 食べるものは粗末にできない。

 誰もが無理やり口に入れて、テーブル上のものを片付けた。


 ンドペキを初めとする幹部が、作戦会議に入った。

 チョットマはフライングアイと共に、アヤの部屋にいた。

 パパもアヤも口をきかなかった。

 時間だけがだらだらと過ぎた。



 スゥは、KC36632じゃないと言った。

 私もそう思う。


 しかしチョットマは、それを言い出せないでいた。

 KC36632でなかったとすれば、本物のサリだったということに。



 なぜサリではないかと思ったのか。

 これまで、KC36632は私と一瞬たりとも目を合わせたり、ましてや微笑んだりはしなかったからである。

 しかし、KC36632が大広間に入ってきたとき、確かに私にチラリと微笑んでみせたのだ。



 サリがレイチェルを刺した……。



 そんな……。

 でも逆に、KC36632がレイチェルを殺す理由ともなると、何も……。





 突然、洞窟内に警報が鳴り響いた。

「軍、接近中! 軍、接近中! 所属不明! 兵数二百! 十八分後に到達の模様!」


 チョットマはすぐさま、自分の部屋に戻った。

 軍が接近してくるのは、ロクモン達が来て以来のこと。

 ついにアンドロ軍か。


「全員、戦闘態勢!」

「直ちに洞窟の外に出ろ!」

「命令があるまで、発砲厳禁!」

 ンドペキから立て続けに命令が飛んだ。


「ロクモン! 相手がレイチェルの親衛隊かどうか、わかるか!」

「正装しているなら!」


 全員に聞こえるように、オープンモードにしている。

「見分け方は!」

「鎧は全身シルバー。白銀! 騎士団なら純白だ!」

「監視室! 確認しろ!」

「了解!」

「幹部! 現在位置を報告しろ!」




 ンドペキが、洞窟の入り口に到達しつつあった。

 パキトポークとコリネルスはようやく大広間を出たところ。

 スジーウォンはすでに洞窟から出ていた。

 チョットマはスジーウォンのそばにいた。



「スジーウォン!」

「はい!」

「相手と交信しろ! どこの隊のものか、聞け!」



 すぐに、スジーウォンが呼びかけた。

「当方はニューキーツ所属東部方面攻撃隊及び防衛軍である! 貴軍はどこの所属か!」


 その横を、フライングアイが飛び去っていく。


 返事はない。

「繰り返す! 貴軍はどこの所属か! 返答なくば、敵とみなす!」



 ンドペキが洞窟から躍り出てきた。

 ロクモンから報告が入る。

 既に戦闘時用のキュートFモードに変えている。



「レイチェル閣下の隊とは見えぬ!」


 ンドペキはすぐさま攻撃態勢を敷いた。

「U隊形!」

「展開しろ! 迎え撃つ!」

「野戦は当方に有利! 経験にものを言わせろ!」


「パキトポーク隊! 丘陵地に着いたら照明弾を撃て!」

「ロクモン隊は右方の高台へ!」


 相手から、まだ何の返答もない。



 展開位置の最も遠いパキトポークとスジーウォン隊が、所定の位置に着くまで、後二分程度。

 チョットマは、武者震いがした。

 人間相手に、まともにぶつかるのは初めてのこと。


 恐怖はない。

 スコープに映し出される相手の動きが整然としていればいるほど、なぜか、勝てる!という気がした。




 フライングアイが戻ってきた。

「向こうも攻撃態勢に入っている!」


 ンドペキが頷くと、チョットマは叫んだ。

「パパは洞窟に下がっていて!」

 そして、前方に意識を集中した。



 チョットマの持つ火力はそれほど大きくはない。

 むしろ敵を撹乱させる攻撃が主だ。

 しかし、いざとなればその敏捷さを生かして相手の懐に切り込む。

 それが自分の戦い方だと、知っている。


 すでに再生装置は止まっている。

 ここで死ねば、本当の死が待っている。

 誰もがそのことを承知している。



 まさしく正念場。



「ぬかりないか!」


 ンドペキの檄に誰も応えない。

 準備は整ったということ。


 チョットマは、自分が奇妙な緊張をしていると思った。

 恐怖ではないし、呆然としているのでもない。


 やってやる!

 ただそれだけの強い意識が全身に漲っていた。




 やがて南方に光が満ちた。

 照明弾に照らされ、敵軍の接近が手にとるようにわかった。


 明るい光の中で見ると、その装備や隊形まではっきり認識できる。

 整った装備。黒光りする装甲。

 一団となって突き進んでくる。



「繰り返す! 貴軍はどこの所属か! 返答なくば、敵とみなす!」

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