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29 記憶 光の柱プロジェクト

 熱い飲み物と簡単な食事をともにしながら、知事は金沢の街が、北陸の各地が、どんな状況になっているのかを話してくれた。


 生駒たちがこの街に来た目的が観光などであるはずがないことは、知事も重々承知。

 しかし、そこには触れず、おっとりした表情を崩さない。

 あれこれと話題を変えながら、大阪から来た老建築家を歓待してくれるのだった。




 知事の口から、光の柱という言葉が飛び出した。

「あれがあるおかげで、この街は今年のような寒波でもなんとかやっていけます。この県庁舎もすでに暖房機能はほとんど壊れてしまっていますが、なんとか過ごしていけます」

 知事は光の柱をこう評して、その存在をありがたがったが、もともとの役割には触れなかった。




 光の柱プロジェクト。


 稼働してからすでに十年以上が経っていたが、日本中にまだ賛否が渦巻いているからだろう。

 目の前の建築家がわざわざ金沢まで来たというからには、強い賛同者か、あるいはその反対かである。

 そこを測りかねていたからだろう。


 だが、どんな取り上げ方でも生駒はうれしかった。

 待っていた話題だった。



 生駒は自分達がこの街に来た目的を話した。

 いや、目的そのものではなく、そのプロセスの一部を。



 知事は難色を示すかと思いきや、顔をほころばせて即答した。

「おおっ、それはそれは!」

「お力添えをいただけますでしょうか」

「もちろんです。あれは、私共の宝です」


 誘致の先頭に立ったのは、この知事自身だという。

 観光の目玉になることを期待して。

 目論見どおり、数年間はそれなりに効果はあった。新聞やテレビで大きく取り上げられていたことを、生駒も覚えていた。



「では、ご案内しましょう」

「ありがとうございます。本当に助かります」

「なんの。ですが、私は明日、朝から敦賀の方へ行く用があります。大変申し訳ないのですが……」

 明後日なら同行できるという。


「お忙しいのですね。失礼しました。では、急ぎたいので、ご同行は結構です」

「そうですか……。車も、あれ一台しかないものですから、お使いいただくわけには参りません。ですので、明日、街外れまでお連れしますので、そこから眺めて帰られるのがよろしいのでは」


 それでは目的は達せない。


「そこから先へは、行けないのですか?」

「いえ、行けないことはありません。ただ、歩いていくのは相当にきついので」

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