282 失敗だったんじゃないか?
床に横たわっていた。
気がつくと、スゥの顔。
覗き込んでいる。
「気分はどう?」
頭や顔を、タオルで拭ってくれている。
「上々だ。眠っていたのか?」
「ほんの数分ほど」
ンドペキは自分の顔に手をやった。
濡れていた。
頭から肩の辺りまで。
「水をぶっかけたんだな」
「違うよ。淵に頭を突っ込んであげた」
「ちっ」
「手続きのひとつ」
頭が冴え渡っているのを感じた。
意識を取り戻したばかりだというのに。
すべての力が体に、脳に、そして精神に宿っているかのような感触。
スゥの顔を見つめた。
タオルを動かしながら、チラリチラリと目を合わせてくる。
「スゥ」
「なあに」
「失敗だったんじゃないか?」
「どういうこと?」
「ん……、すまない。君のことを思い出さない」
スゥはなにも言わずに立ち上がると、
「さ、もういいわよ。立ってみて」と促した。
立ち上がった。
ふらつくこともないし、眩暈もない。
「大丈夫みたいだ」
そしてもう一度、スゥをよく見た。
ランプの明かりを横顔で受けて、スゥは美しかった。
ん?
スゥが、ゆっくり後ずさり、離れていく。
セラミックのテーブルへ。
テーブルを通り越し、山と積まれた資材の陰へ。
歩み寄ろうとすると、スゥはいやいやをするように、首を振る。
「私の仕事は終わり……」
と、目を伏せてしまった。
「すまない。思い出せないんだ」
スゥが手を挙げた。
後ろを見よ、というように。
俯いたまま。