281 ありとあらゆるシルエット……
「座って」
「ああ」
スゥが、イコマが、JP01が見つめる中、ンドペキはタブレットを口に含んだ。
「つっ!」
辛い!
舌が痛い!
と、思ったのも束の間、目の前が真っ暗に。
その直前、JP01の姿が消えた。
口内で固い風船が一気に膨らんでいくような感触とともに、喉に破裂するような痛みが走った。
そして、顎が外れ、頬が裂けた! かのような暴発感。
得体の知れない感触が、口内を中心に頭部全体に広がった。
「んぐぐぐっ」
ンドペキは耐えた。
タブレットを吐き出そうにも、すでに自分の意思で舌や唇を動かすことはできない。
平衡感覚が失われ、ぐらりと前のめりになった。
思わず両手を床に付け、目を閉じた。
まぶたには様々な色彩が現れ始めている。
さまざまなモノのシルエットが、めまぐるしく浮かんでは消える。
人の形やビル、室内や列車、光の柱、女の顔、パリサイドの姿、森の木々……。
ありとあらゆるシルエット……。
意識が遠のいていくのを感じた。
白いチューブの中。
浮上していく。
チューブの壁に文字が……。
大量の文字の群れ。
上昇速度が速いからなのか、意識が朦朧としているからなのか、全く理解ができない。
ぐんぐん上昇していく。
ああ、俺は死んだのか。
こうやって、死後の世界に行くのか。
そんなことを思った。
下は、白いもやがかかっているように、何も見えない。
頭上には、チューブの出口だろうか、小さな丸い黒い粒が見えた。
チューブだと見えたが、いつしかそれはねじ曲がり、何本にも枝別れし、もうまっすぐに上昇しているわけでもない。
猛烈なスピードで闇雲に飛び回っている。
上下左右もわからない。
体が激しく回転し始めた感覚。
何も見えない。
薄墨色の世界。
そして、意識が途切れた。