279 これまで何度言ったことか
スゥが口を開いた。
「ンドペキ、前に私が言ったこと、覚えてる? そのときがくれば、私に任せてねって」
「ああ」
「今がそのとき。もう、任せてもらうしかないわ」
「そうなのか……」
「これまで何度言ったことか。私を信じてって」
「……」
「もうこれが最後」
スゥの声が震えていた。
お願い。
言うとおりにして。
そんなふうにスゥの目が訴えていた。
「今までどおりのンドペキ隊長として、何も変わることはない。それは保証する。じゃ、始めよう」
スゥの声が、高らかにホトキンの間に響いた。
「待ってくれ」
「なに?」
「この人は?」
見知らぬ女が、口を開いた。
「そう。これが私の本来の姿」
女は長く艶やかな黒髪に触れた。
チャーミングだ。
どことなくスゥに似ているが、背はずっと小さく、華奢だ。
あの寸胴で巨大なJP01本人だと言われても、にわかには信じがたい。
「信じてもらうしかない」
女が微笑んだ。
引き込まれるようなかわいらしい笑顔だった。
スゥがポケットからガラス瓶を取り出し、中のタブレットをひとつ、手の平に落とした。
「さあ、ンドペキ、これを口に含むのよ。飲み込まなくてもいい。一瞬で溶けるから」
スゥの口ぶりは有無を言わさぬ厳しさがあった。
フワリ。
ん?
と、イコマがJP01の肩に移動した。
スゥがその様子を見つめた。