269 当分ここで、あなたと一緒にいられるねっ
ンドペキは、改めて自分は半人前だな、と実感した。
ロクモンがこのような考えを持ってここに来たことも予想できなかったし、今のレイチェルのような振る舞いも予想を超えるものだった。
そして、チョットマ初めとする隊員達の反応も。
心にじんとくるものがあったが、次のコマンドは自分が発さなくてはならない。
ンドペキは平伏しているロクモンに歩み寄った。
拍手が止んだ。
「よろしく頼む」
と、手を差し出した。
ロクモンは、厳しい表情ながらも差し出した手を握り返し、
「お世話になり申す」と、応えた。
再び、カチャカチャの音が大広間に響いた。
やがて、ロクモン率いる防衛軍兵士が洞窟に入ってきた。
武器は没収してある。
コリネルスが部屋割を決めた。
洞窟は一気に三倍ほどの人数になったため、東部方面攻撃隊兵士と防衛軍兵士が相部屋となった。
そして全員での夕食とあいなった。
ンドペキは、
「レイチェルって、本気の長官だったんだね」
「すごい迫力だった」
「オーラが出てたぞ」
「格好いい!」
というような、隊員達のささやきを聞いた。
一堂に会する夕食だからといって、ンドペキは特段の挨拶はしなかった。
そうするまでもなく、隊員達も防衛軍兵士も、お互いのことを知ろうと生き生きとした表情をしていたからだ。
レイチェルはンドペキの横に座り、黙って口を動かしている。
スゥもいつのまにか姿を見せ、隅っこで食事をとっている。
遠くの席で、チョットマがはしゃいだ声をあげていた。
「食事が終ったら、ロクモン達にルールを教えてやれ。この洞窟の。連中のリスト化や特性のヒヤリングも始めてくれ」
ンドペキは、コリネルスに指示した。
レイチェルには、
「よかったな。頼もしい仲間が増えて」とささやいた。
すると、レイチェルは、
「本当によかった。まだ当分ここで、あなたと一緒にいられるねっ」
茶目っ気たっぷりに目の周りで笑った。
「だからな。そういう、ややこしい言い方やめてくれないかな」