267 私にすべてを預けますか?
「案内しよう。ただし、武器は預からせてもらう」
「むろんだ」
男が見張り隊に武器を預けた。
「こちらへ」
すでに、レイチェルには連絡済みだ。
レイチェルは、まず、ンドペキと自分の部屋で話をしておきたいと返してきていた。
ンドペキは背中を向け、洞窟に入った。
「中は暗く深い。床も斜めになっている。注意して飛び降りられよ」
「了解仕った」
ロクモンの回りは、隊員達が幾重にも固めている。
武器を水平に構えている者もいるが、ンドペキは自由にさせていた。
発砲することはない。
それくらいの応対で、この男には十分だ。
「しばらく待たれよ」
大広間にロクモンを残し、ンドペキはレイチェルの部屋に向かった。
パキトポーク以下の手誰がロクモンを取り囲んでいるので心配はない。
ロクモンは、勧められた椅子には座らず、ヘッダーもマスクも外そうとする。
強面の髭面が現れた。
フライングアイが飛んできた。
「うむ」
「では」
レイチェルは、それほど嬉しそうではなかった。
「今更、何をしに来たのかしら」
などという。
「そんなことを言うもんじゃない、と思います」
上官に対する言葉遣いと、友達言葉が混じってしまう。
ンドペキも興奮していた。
言い直した。
「失礼しました。我々も同席させていただきます。よろしいですね」
この点は絶対に譲れない。
もし、だめだというなら、会談を破談させてしまうつもりだ。
「もちろん。頼りにしています」
レイチェルはあっさりそう言ったが、なにか言い足りなさそうだ。
「私は口を挟みませんが、我々に不利になるような内容でしたら、そう申し上げます」
「ええ」
レイチェルはまだ、立ち上がろうとしない。
「パリサイドとの会談の時には、あなたは力強いサポート役だった」
何を言い出すのかと思ったら、そんな過去のことを言う。
「では、参りましょうか」
ンドペキは促したが、レイチェルが不安げな顔を見せた。
「ロクモン将軍は、間違いなくあなたの部下ですね?」
レイチェルの不安の元を突き止めておかなくてはいけない気がした。
相手の要求が何なのか、分からない段階でレイチェルが弱気だと困る。
「なにか、ご不安があるのですか? 身分証でも示させましょうか? すでにヘッダーもマスクもとっていますが」
「本人かどうか、顔を見れば分かります」
「そうですか。では?」
「ンドペキ」
「はい」
「あなたには言いにくいことですが」
「どうぞおっしゃってください」
「あなたと隊員達は、私にすべてを預けますか?」
ンドペキは、あっ、と思った。
レイチェルは忠誠を誓えと言っている。
今までそんなことを意識したことはなかったが、兵である限り、そういうことなのだろう。
ハクシュウもこうしてレイチェルに忠誠を誓っていたのかもしれない。
「当然のことながら、攻撃隊はあなたの部下です。私は、隊長として半人前ですが」
「自分を貶めることはありません。あなたは東部方面攻撃隊の隊長として立派です。ごめんなさいね。聞いておかなければ会談はできないので。では、行きましょう」
レイチェルの顔が、見る間に引き締まった。