253 目立つのはよくない
やっとスゥが目を合わせた。
「えっ、もちろん大丈夫」
「暗証番号は?」
スゥはニッと笑って、任せて、と言う。
「でも、途中まででも案内してくれると助かるけど」
「じゃ、私が」
「ダメ。チョットマのパパさん、よろしくお願いします」
「どうしてもダメ?」
「却下!」
残念だったが、仕方がない。
遊びじゃないのだから。
クシという名は出さなかったが、ネールも気にしてくれているのだろう。
そう考えて、チョットマは引き下がることにした。
「パパ、大丈夫?」
「もちろん」
「補給路の確保という点では、問題なさそうだな。スキャンが利いていなくて、兵士もいなければということだけど」
「そうね」
「どのみち、あそこを通るしか、ルートはないんだろ」
「そうみたい。ここは一本道だし」
「あった!」
イナレッツェがプリブのデスクから、マップを探し出した。
「おお! かなり詳しいぞ。使える!」
建物の一階から地下のエリアをかなり網羅している。
ビルの出入り口からこの部屋までの経路も明示されている。
「うーん、でも、抜けてる」
チョットマはマップを睨んで溜息をついた。
「どこが?」
「だって、ライラの部屋のあるエリアが」
「ん? そうか。このマップだと、どこにその入り口があるんだ?」
かなり苦労したが、なんとかその入り口の位置を思い出した。
「ここから、サキュバスの庭に入る」
「なるほど。でも、まずまずは正確ということだよな」
「そうみたい」
マップに、サキュバスの庭を書き足した。
「よし。少なくともこの周辺だけでも書き加えていこう。そろそろ出発できるか?」
ネールは明らかにチョットマに向かって聞いてくる。
その気持ちをありがたいと思ったが、口にはしなかった。
訳を話せば心配させてしまう。
「フル装備で走り回る? 目立ちすぎない?」
イナレッツェは不安そうだ。
「うーん」
このスラムで装備を外してしまうのは、勇気がいる。
丸腰で敵地を歩くようなもの。
「任務は偵察。目立つのはよくないよ」
チョットマはそう応えたが、やせ我慢ではない。
ンドペキの顔を思い浮かべた。
無理はするな、と何度も念を押された。
そんなに思われていることに応えたかった。
なんとしても作戦を成功させたい。
そう思う。
「じゃ、着替えるか。幸い、ここにはプリブコレクションがたんまりある」
「アンダーくらいはつけておいてもいいかもね。兵士がいないなら」