250 呪術師、ってわかる?
チョットマは、移動中、スゥとたくさんの話をした。
しかし、スゥは一時の元気さはどこへやら。
始終言葉少な。
スゥに対する敵意は、もう、ない。
アヤを助けにエーエージーエスに飛び込んでいくような人だもの。
あるのは、ンドペキを取り合うライバルかも、という気持ちだけ。
むしろ、レイチェルに対抗する気持ちが、スゥを同志のように思わせていた。
スゥのことをもっと知りたい……。
「ね、スゥ。どんなお仕事してるの?」
「呪術師。ってわかる?」
「ん、だいたい」
「人を呪い殺すんじゃないよ。科学技術では御しきれない事柄を解決するのが仕事」
「ふうん。例えば?」
「原因不明の病気を治したり。占いをしたり。探し物だって請負うよ」
「へえ」
「表向きの仕事なんだけどね」
「表向き? じゃ、本当は?」
「自殺希望者の手助け」
「へえ。なにそれ」
「想像してよ」
「ね、ね、スゥ。ライラは好き?」
「そうねえ。好きでも嫌いでもないけど、お互いに助け合ってる」
「助け合う? そうなの?」
「私だけではできないことを頼む。彼女がいるから私は安全。彼女がいるからいろいろな情報が手に入る。お互いにそういう関係」
「ライラは、敵だって言ってたよ」
「そうねえ。まあ、そうとも言えるかな」
「ねえ、スゥ。とんでもないことに巻き込まれたって、思ってない?」
「ううん。ぜーんぜん」
「そうなんだ。スゥは強いんだね」
「強いわけじゃなくて……」
「だって、街の人はこんな状況に慣れていないでしょ」
「チョットマ、それは思い上がりっていうものね。社会の表舞台に出てこない人達は、もっと深刻な問題に取り組んでるよ。何の手助けもないまま。必死でもがいてる。私も含めてね」
いろいろな話をしたが、チョットマにはどうしても聞けなかったことがある。
ンドペキをなぜ匿ったのか。
それはとりもなおさず、スゥとンドペキの関係を知ることになる。
知ることは怖かった。