249 作戦を反芻して
エーエージーエスに隠れた荒地軍は、階段に留まっていたのではなかった。
チューブの内部にいるものと思われた。
階段で見張りをしている兵士が入れ替わっているところをみると、チューブの中でオーエンの餌食になっているわけでもなさそうだ。
ンドペキは、彼らを掃討することを諦めた。
近づくと見張り兵もチューブに逃げ込んでしまう。
かといって、自分達がそこに踏み込むことは危険が大きすぎる。
オーエンが敵をかくまっているとしたら、そこに飛び込むことは死を意味する。
その頃には、それがアンドロの軍だということが確実になっていた。
彼らから届いたメッセージには、タールツー名で投降を促す言葉があった。
もうひとつ、ンドペキ達を驚愕させた出来事があった。
南軍と呼んでいた政府軍の兵士が、日一日とますますその数を減らしていたのだ。
理由は簡単に推測できる。
強制死亡処置が実施されているに違いなかった。
それでも政府軍は歩み寄ってくる姿勢を見せない。
レイチェルの書簡を本物だと信じていないのか。
チョットマは、瞑想の間を出発し、ホトキンの間を経て街への通路を急いでいる。
ネールとイナレッツェ、そしてスゥとパパが一緒だ。
作戦のあらましは、ンドペキと打ち合わせたとおりで変更はない。
チョットマは何度も何度もそれを復唱していた。
ンドペキの口元や、目の表情を思い出しながら。
ミッション 一
街の状況を知ること。
街には出るなときつく言われている。
エリアREFの地上に近い通りにも出てはいけない。
監視網にかからない下層階でのみ活動せよ。
なので、これはもっぱらスゥとパパの役割だ。
スゥは自分は消去させられることはないと、絶対の自信を持っている。
自分の会社は今も通常通り営業しているし、自分自身もある方法によって、政府の監視網に捕捉されないのだという。
チョットマが状況把握をするのは、ライラに話を聞きにいく程度だ。
一時的に政府の監視網に掛かるエリアを通ることになるが、ンドペキに黙って、敢行するつもりだった。
もちろん、アヤの布地とハクシュウの手裏剣を取り戻すためにも。
ミッション 二
補給路を確保すること。
将来、エリアREFあるいは街で戦闘になったとき、洞窟からの物資の補給経路が確保できるかどうかが生命線。
最大の難関は、昔の防衛部隊員だった兵士がスキャンをかけて賄賂を要求する地点。
ただこれは、エリアREF全体が戦場になった暁には、彼らの行為そのものが意味を成さなくなるだろう。
ミッション 三
主要な通路の見取り図が必要。
それが頭に入ってこその作戦となる。
隊員がエリア内で迷ってしまっては意味がない。
エリアマップの作成はかなりの時間を要する。
なにしろ、複雑で広い。
広いだけではなく、重層化していて、始末が悪い。
目印になるような地点もほとんどない。
どこまでいっても暗い通路がグネグネと続いているエリアだ。
しかも、ンドペキの指示は、地上部に近い階には行くなという。
ミッション 四
拠点造営の可能性検討。
チョットマの考えでは、これはホトキンの間しかない、と思っていた。
物資の保管も可能。
隊全体が休養を取れる広さもある。
あくまで第一段階という意味で。
ただ、ホトキンの間には問題がある。
後がないのだ。
ホトキンの間まで敵に攻め込まれたとき、退路がない。
瞑想の間に続く通路は、巨岩の隙間程度で、身動きしにくいスペースが続く。
難点はもうひとつある。
エリアREFまで、数十分かかる。
したがって、できるだけ早い時期に、もう少しエリアREFに近い位置に拠点を築くことが望まれた。