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225 我が隊のホープ

 もう自分では収拾できないことは明らかだった。

 レイチェルは目を伏せている。

 数多の声をじっくり聞こうという態度なのか。


 パキトポーク、コリネルスは我関せずという様子。

 スジーウォンは、薄ら笑いさえ浮かべているように見える。


 彼らはンドペキの、隊長としての手腕を確かめようとしているのだろうか。

 チョットマは不安になってきた。

 ところが、肝心のンドペキも平然として、時々フッと笑ったりしているではないか。




 どうしよう!

 どうしよう!



 やっと、ンドペキがレイチェルの方を向いた。

「ということです。レイチェル、やはり別室で待っていてくれませんか」


 うん、それがいい。

 ううっ、でも、緊張する!

 レイチェルがすんなり従ってくれればいいが、嫌だといったらどうする!


 チョットマはすがる思いで、レイチェルを見つめた。

 ふと、サリを見ているような気分になった。

 やっぱり私にではなく、サリに似ている。そんな気がした。




「そのようね」

 レイチェルが、にこりと笑った。


「さすが、東部方面攻撃隊」と、立ち上がる。

 近くにいた隊員が介助する。

「皆さんに気を使わせてしまった。ごめんなさい」

 そう言うと、大広間から出て行く。


 手や足は、まだままならないようで、ぎごちない歩き方だ。

 隊員達の目がその姿を追ったが、レイチェルは始終にこやかな表情だった。




 よ、よかった……。


 チョットマは胸をなでおろした。

 しかし、レイチェルが歩きながら、一瞬、自分に目をくれたことを見逃さなかった。

 その眼に、むらりといた怒りがあることも見てしまった。

 つくづく、まずいことを言ってしまったと後悔した。




「それで?」

 ンドペキが何事もなかったかのように、説明を求めた。


「えっと、あ、何でしたっけ。緊張したので、何を説明しようとしていたのか、忘れました!」

「地下通路を通って街へいく場合に備えて、その経路の状況を」

「ハイ!」




 チョットマの説明が終ると、パパがンドペキに発言の機会をもらって、挨拶をした。

 アヤ、つまりバード、が意識を取り戻したという。

 パパは、何度も何度も隊員達に礼を言った。


 会議は終了となり、臨戦態勢は解かないものの、各々自由に過ごしていいということになった。

 チョットマは自室に戻り、眠ろうとした。

 朝、ここに帰ってきてから少しは眠った。しかし、眠り足らない。

 しかし、興奮がまだ続いていて、睡魔は訪れてこなかった。



 またサリのことを思った。

 会議のとき、サリが隣にいてくれたらどんなに心強かっただろう。

 サリがいなくなってから、いろいろなことがあった。

 そのどんな場面にでも、サリがいてくれていたら……。



 サリの捜索。

 もう、ンドペキはしないだろうな。


 いや、でも少なくともKC36632には、ちゃんと事情を聞いてくれるだろう。

 ンドペキが聞かないなら、私が聞こう。

 そんなことを思った。




 フライングアイが部屋に入ってきた。


「パパ、よかったね」

「ああ、ありがとう。君に頼んで本当によかった。感謝している」

「私は何もしてないよ」

「ううん。ホトキンを見つけてくれたじゃないか。それに、最初に相談したのは君だ。君がハクシュウを動かしてくれた」


 チョットマは、そう言われてうれしかったし、誇らしくも感じた。


 カーテンをたくし上げて、ンドペキが入ってきた。

「お邪魔してもいいかな」


 チョットマは起き上がり、姿勢を正した。


「さっきはすみませんでした。あんな生意気なことを言って」

 ンドペキが微笑んだ。

「おまえこそ、我が東部方面隊のホープ。そのおまえが、俺の部下でよかったと思ってる」


 ええ?


「でも私、レイチェルを怒らせてしまった……」

「いいんだよ。本当は俺が断らなけりゃいけないのに、俺もパキトポークもスジーウォンもコリネルスも、彼女に押しきられてしまったんだ」

「そうだったんですか……」

「なにしろ、俺は隊長初心者なんでな。これからも、おまえにいろいろ助けてもらう」

「ハイ、あ、いえ、よろしくお願いします!」


 ンドペキはニッと笑うと、パパに話しかけた。


「荒地軍の様子はどうですか?」

「もう少しで接触できます。もうしばらく待ってください」

「わかりました」

「ただ、妙な具合なんです」

「ん?」

「パリサイドが終結しています」



 パパが言うに、大勢のパリサイドが羽根を広げて、空を覆っているという。


「ただ、空に浮かんでいるだけです。荒地軍も攻撃はしていません」

「うーむ」

「ちなみに荒地軍は何の行動も起こしていません。宿営地から動いていません」

「そうですか。何かあればすぐに伝えてください」

「もちろんです」



 ンドペキが出て行ってから、チョットマはパパに話しかけた。


「ねえ、パパ。少し話をしてもいい? それともアヤさんの部屋に戻る?」

「いいよ。でも、少しだけね」

 チョットマは、さっき思っていたサリのことを話した。



 しかし、話の途中で、フライングアイは何も言わずに部屋を飛び出していった。

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