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214 荒地軍は敵、という思い

 フライングアイはチョットマの懐から出た。

 イコマが洞窟に入るのは初めてだ。

 岩盤の下でも、メインブレインと同期している。

 一抹の不安はあるが、ありがたい。



 ンドペキとチョットマが、隊員たちに囲まれている。



 荒地軍が東部方面攻撃隊を攻撃しようとしていることを知った。

 それをKC36632が知らせに来たことも知った。


 ホトキンの装置の前で、ンドペキが水の中に現れた影に声を掛けられたことも、そしてそれがJP01ではないかと思ったことも。



 ライラの言葉も繰り返し検証した。

 エーエージーエスで殲滅された軍は正規の防衛軍で、レイチェルをあそこからから救出しようとしていたのかもしれない……。


 イコマ自身は、眠っていたおかげでその凄惨なシーンを見ていない。


 最新鋭の装備を持つ統制のとれた軍……。

 彼らがどこから入ってきたのかわからない。


 ハクシュウらは彼らと交戦もしていなければ、言葉さえ交わしていない。

 軍の目的は、実際はわからない。

 オーエンが敵軍だと言った、その言葉だけで判断しているにすぎない。



 ライラの言うことが正しいように思えた。




 ンドペキが話してくれた、今の洞窟の状況。

 つまり、いつ何時、荒地軍からの攻撃を受けるかもしれない。

 これについても、同じようなことがいえる。

 KC36632がもたらした情報のみが、ンドペキらの行動を左右している。




 敵が誰なのか。

 目的は?

 実際は何も把握していない。


 オーエンは信用できるか?

 KC36632は信用できるか?



 エーエージーエスの科学者オーエン。

 どれだけ頼んでも扉を開けようとしない。


 ホトキンを連れて来いという条件。

 我々はこの男の罠にまんまと嵌められただけではないのか。

 敵軍という言葉を使って殲滅しておいて、恩を押し付けられただけではないのか。




 KC36632はどうだ。

 まだ、サリの顔を持つという。

 顔だけでなく、姿かたちもそっくりだという。


 彼女が伝えたように、荒地軍が集結しているのは事実。

 洞窟に帰還してきたスジーウォンの報告とも一致する。


 しかし、荒地軍は東部方面攻撃隊への攻撃を意図しているのか。

 これは本当なのか。


 彼女の言葉を正確にンドペキに思い出してもらったが、それは、目標は明らかにこの洞窟です、というもの。

 目標。

 攻撃、あるいは戦闘といった言葉は使っていない。



 その前に、スゥは荒地軍が攻撃するつもりだと言ったし、現に撹乱しようとしたチョットマやスミソは砲撃を受けた。

 そのことだけが相手との具体的な接触なのだ。


 KC36632は、嘘は言っていない。

 しかし、彼女の目的はなんだ。

 いや、JP01の、あるいはパリサイド側の目的というべきか。

 なにを目論んでいるのだろう。




 KC36632がもたらした情報によって、ンドペキ隊は戦闘準備を整えるに至った。

 それを見越しての通報ではないだろうか。


 つまり、パリサイドはニューキーツの軍内部で戦闘を引き起こそうとしているのでは。

 いわば、仲間割れ。

 クーデター。

 ニューキーツ全体の防衛力を削減するために。





 イコマはこれらのことをンドペキに伝えた。

 しかしンドペキは唸るだけで、明確な反応は示さなかった。

 彼とて、わからないのだ。


 荒地軍が本当に敵なのか、という疑問が心から消えない。

 敵だとしても、それが何者なのか、がわかっていないではないか。





 瞑想の間では、ンドペキとチョットマの報告が終わり、隊員達が、それぞれの持ち場に戻っていく。

 ンドペキが、その足でエーエージーエスに向けて洞窟を発った。


 チョットマもこれから忙しくなるだろう。

 それに、疲れてもいるだろう。


 イコマは、チョットマと一緒にいることは止めて、しばらくは単独で行動しようと思った。

 うん、いいよ、と、チョットマは泣き顔に無理やり笑みを作って、フライングアイに手を触れた。



 イコマは思う。

 アヤやチョットマに、そして東部方面攻撃隊の面々に自分がしてやれること。

 情報を集め、考え抜くこと。

 それが今の自分にできること。

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