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209 いい夢を見させてもらおう

 グローブをはめた手で、ンドペキは木片に触れた。

 空洞のある辺りの岩壁に目をやるが、何も起きない。


 かなり待ったが、何も変化はない。


 摘まみ上げた。


 相変わらず、何も変わらない。



 テーブルに置いて、スイッチのように押すのか。

 それとも……。

 どこか別の場所に置くのか。

 嵌め込むようなところがあるのか。


 むらむらと怒りがこみあげてくる。




 スジーウォン、後はうまくやってくれ。

 死にたいなどと考えていた己のふがいなさが、思い出される。


 木片を再び摘まみ上げ、裏側を見た。

 なにも書かれていない。


 これをどうする……。




 むっ!


 背後から、かすかな唸り音が聞こえてきた。

 木片を投げ捨て、テーブルの背後に横っ飛びすると、振り返りざまに武器を構えた。


 さあ、出てきやがれ!


 いい夢を見させてもらおうか!




 スコープのモードを変え、異変の兆候を把握しようとした。  



 ん!


 音が大きくなってきた。

 水の音!


 む!


 淵の水が退き始めている!



 けっ、竜神様のお出ましかい!


 しかし、ただ水音がこだまするだけ。




 そのまま何分かが過ぎた。

 何者かが現れる気配はない。

 水が退いていくだけで、危険の臭いはしない。



 ンドペキはじり、じりと、水辺に近づいた。


 あっ!


 水中の壁に横穴が見え始めていた。

 轟轟と水音を立てて水位が下がり、穴から大量の水がほとばしる。


 やがて横穴の全貌が姿を見せた。


 通路か……。

 それとも……。

 あそこから……。


 

 違う。

 穴は人の手によって穿たれたもの。

 ここに至る、巨石の隙間を縫うような通路ではない。

 石貼りの床。



 その高さにあわせた、テラスのようなプラットホームが現れた。


 通路の中もプラットホームも、水が引いたばかり。

 溜まった水が光を反射していた。




 淵の水は、プラットホームが出現した位置でしばらく渦巻いていたが、やがてぴたりと止まった。




 こういう仕掛けだったのか。


 プラットホームまでわずか二メートルばかり、高低差も三メートルほど。

 ホーム自体は広く、五メートルはある。


 跳び移ることに何の問題もない。

 そうすれば通路に入っていける。



 しかし、プラットホームは実体があるのか……。

 幻か。

 


 ンドペキは、迷いを封印し、跳び移ろうとした。




 そのとき。



「待て!」

 と、叫ぶ声を聞いた。

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