203 夢 血 時
夢、血、時。
どれなんだ。
なにを選べばいい!
わからない……。
いや、選ばずとも、道は開けるのでは。
もしや、ここは行き止まりで、どこかで正しい道を見落としたのか。
ンドペキは広間の壁や天井、床も改めて調べ始めた。
岩に阻まれた空洞は、水系を挟んだ向こう側。
ならば、この水系に仕掛けがあるのか。
眼だけが頼りではない。
水系にグローブごと手を浸けてみた。
確かに水、のようだ。
やはり空洞を確かめなくては。
あそこに通路があるはず。
岩で塞がれた道が。
あの岩を開く何か仕掛けが。
いや、空洞と見えるものは通路ではなく、単に岩と岩の隙間なのか。
ええい。
やってみるか。
ンドペキは小型のエネルギー銃を構えた。
と、久しぶりに、声が聞こえた。
「フフ、無駄だ。どんな爆薬を持ってきても意味はない。この洞窟もろとも吹き飛ばすなら、話は別だがな」
まだ見ていた!
そして笑いやがった!
やはり、楽しんでいやがる!
「選べ!」
「くそ!」
「え・ら・べ!」
しかし、声もそれきり。
もう、どんなに罵詈雑言を浴びせようとも、どんなに懇願しようとも、そして状況を丁寧に説明しようとも、声は消えた。
時間切れだ。
これ以上、時を無駄にすることはできない。
選ぶしかない。
木か、鉄か、セラミックか。
夢か、血か、時か。
木片、鉄片、セラミック片。
夢、血、時。
常識的に考えれば、血はない。
夢か、時か。
ンドペキは、木の小片が載ったテーブルに近づいた。
「夢を取るのか」
声が聞こえた。
クッ。
遊んでいやがる。
「よかろう。夢を取れ」
「うむう」
声の主は、迷わせて楽しんでいる。
「これを取れば、どうなる!」
迷えば迷うほど、声を楽しませるだけだ。
俺にはもう時間がない!
所詮、これは遊びだ!
卑劣な遊びに付き合っている暇はない!