190 考えておいた嘘
スジーウォンが帰還してきた。
協議したが、いい案は出てこない。
結論は、この洞窟の別の入り口を使う作戦しか手はない、という方向に落ち着いていった。
「よし、そうと決まれば、すぐに瞑想の間の奥に向かおう」
ンドペキは議論を終結させた。
「俺が行く」
コリネルスが目を丸くした。
「おい!」
スジーウォンは目を吊り上げた。
「ンドペキ!」
ンドペキは、そこに恐ろしい何者かが待っているという話をするつもりはなかった。
得体の知れないものを引き合いに出して、だから自分が行くのだと言いたくはなかった。
かといって、隊員を正体不明の危険に立ち向かわせるつもりもなかった。
「言いにくいんだが、スゥからその話を聞いたとき、彼女は、万一のときは俺が行かなければならない、と言ったんだ」
「なんだ、それは!」
「知らない。というより、そのときはこんなことになるとは思いもしなかった。でも、考えてみてくれ。スゥはこうなることを予測して、ここに俺達が篭城する準備をしていた。全くそのとおりになったわけだ。そうなれば、彼女の言うとおりに俺が動くのがベストなんだと思う」
考えておいた嘘。
そうとでも言わなくては、指揮官の自分がひとり、戦場を後にできるはずがないし、コリネルスやスジーウォンが納得するはずもない。
「この洞窟は彼女のもので、彼女が用意してくれたもの。もし、スゥを信用せず、俺が行かずに誰かに行かせて、もしものことがあれば、俺はどうやって皆に説明すればいいんだ?」
「ううむ……」
「今から出立する。俺が戻るまで、なんとか持ちこたえてくれ」
ンドペキは立ち上がった。
「待て」
スジーウォンが腕をとってきた。
「私の部下を連れて行って。何かと役に立つ男がいる」
「ありがとう。でも、俺ひとりで行く。後を頼む」
背を向けたンドペキに、声が追いかけてきた。
「気をつけて、なんて言わない。いつ、帰ってくる?」