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185 ここより危険なところ

「それ、何? おもちゃみたいなの」

「ネット」

「なにそれ」


「古い時代に使われていた通信手段。文字をひとつづつ入力して、やり取りするんだ」

「手間、かかるね。なにかいいこと、ある?」

「まあね。俺もめったに使わないけど、アンダーグラウンドの情報は、これでしか手に入らないから」

「ふうん。で、なに調べてるの?」

「今から行くところ」




 シャワーを浴びて着替えると、幾分、気持ちが落ち着いた。

 素顔を見せることにも、それほど大きな抵抗感はなくなっていた。


 こんな男だったかな、とチョットマは思った。

 プリブも変相を解いていた。


 平板な顔をしていて、鼻がやたらと大きい。

 陽に焼けた赤ら顔に、短く刈り込んだ髪は黒くてごわついている。


 おぶわれたときにも感じたが、肩幅は広く、体は筋肉質だ。

 薄いブラウンの瞳が涼やかで、チョットマは好感を持った。



 しげしげ見ていると、プリブが鼻の頭を掻いて、どうした? と照れた。

「ううん」



「さ、始めよう。座って」

 飲み物と食べるものが用意された。

 テーブルは小さく、向き合うと手の届く距離に互いの顔がくる。


「あ、これ」

「そう、俺もいつも買うんだよ」

 小さなリンゴがあった。


「顔が近すぎて、なんだか緊張するね」

「うん。でも、これが本来の姿さ」

「なにが?」

「いや、まあ。それより君のパパは?」

「あれ? その辺に」


 シャワーを浴びるときに懐から出して、ブースの外に置いたはずだ。



 フライングアイはまた、あの紫色の布の上にじっとしていた。

「ここにいる。話を始めよう」

 パパが言った。




「よし。ではまず、イコマさん。なにかホトキンについて情報はありますか?」


 パパが、エーエージーエスとオーエンについて、説明をしてくれた。

 しかし、ホトキンという男が何者で、どこにいるか、情報はまだない、という。


「うーむ」

 腕組みをしたプリブが宙を睨んでいる。

 チョットマは痺れを切らした。



「さっき、今から行くところって言ったよね。どこ?」

「ああ」

「早く、それを話して」

「ホトキンが何者か、あそこに行けば何か分かるかもしれない。それだけなんだ」

「なんだ。でも、まあいいよ。早く、行こう」


 しかし、迷っているようだ。

「そうなんだけど……」



 考えてみれば、昨日からまともな食事をしていない。

「どうしたのよ」

「うん……」

 二人でリンゴをかじり、パンを口に入れた。


「俺ひとりで行ってくる」

「なんで!」

「君は、ここで待っていてくれないか」

「冗談じゃない! 嫌よ!」



 プリブが言いにくそうに、喉を詰まらせた。


「さっき、調べたら、どうも、今日はとても危険みたいなんだ」

「危険って、ここより危険なところがあるの!」

「ここは目立ちさえしなければ、危険じゃないさ。今から行こうと思うところは……」

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