178 被り物をとれ!
しかし、カーテンの向こうは、またしても階段だった。
恐ろしい絵が書きなぐられていた。
歩調を緩めて降りていく。
プリブが振り返って、黙っていろ、と指を立てる。
五十段ほど降りたところで、スロープになった。
二十メートルほど先、突き当たりに、これまで見た中で最も頑丈そうな鉄の扉があった。
プリブが暗証番号を打ち込む。
六桁。
それほど強固なセキュリティではない。
きしみながら扉が開いたが、その先も同じような廊下が続く。
徐々に、いよいよ狭い下り坂。
ごつごつした岩が両側に迫る。
人がすれ違うことも難しい。
しばらく進むと、ようやく少し明るい場所に出た。
通路の幅も広がって、天井もわずかに高い。
しかしそこには、数名の兵が立っていた。
間隔をあけ一列に並んで、行き来する人を監視していた。
一見するだけで、その兵士達の異様さが分かる。
数世紀前の装備。
しかも手入れもされず、光は鈍く、錆が浮き出ている。
携えている武器も、発砲する能力があるのかどうかさえ怪しい年季物だった。
プリブがその兵士達の前へ歩んでいく。
チョットマも後に続く。
と、最初の兵士が大声をあげた。
「きさま! 被り物をとれ!」
チョットマは飛び上がりそうになったが、かろうじて無関心を装う。
すかさずプリブが、その兵に紙幣を握らせた。
ふたり目の兵士が叫んだ。
「ハクシュウは死んだぞ!」
思わず息を呑んだ。
またプリブが紙幣を握らせる。
三番目の兵士は、
「女だな!」
四番目は、
「フライングアイを連れ込むのは禁止だ!」とすごむ。
五番目は、
「パキトポークが死んだぞ!」
六番目は、
「東部方面攻撃隊は崩壊した!」と、叫んだ。
チョットマは、その都度、心臓が止まる思いだった。
しかし、顔を硬くこわばらせ、何とか無表情で通り過ぎることができた。
兵士達をやり過ごし、また坂道を下っていく。
先ほどまでとは違って通路は一直線。
壁も床も天井も均質な石でできている。
途中で枝分かれする四差路や三差路はますます細いが、一応はメイン通路なのだろう。
一体全体、ここはどういうところ?
かなりの距離を歩き、かなりの深さまで降りてきたはず。
ニューキーツに、こんなに大きな地下の街があるとは。
幻覚を見ているのではないかとさえ思った。
ようやくプリブが立ち止まった。
「チョットマ、よくやったね」と笑った。
また涙が出てきそうになった。
「ハクシュウやパキトポークがって」
そう言うのがやっとだった。
「彼らはいつもでまかせを言って、こっちの心を試すのさ」
「ううっ、とんでもないところに来た……」
「まあね。でも、俺の部屋はもうすぐ。最後の難関があるけどね」
「最後の、難、関……」
プリブが微妙に笑った。
もう、本当に嫌……。
最後の難関って……。
進むにつれて、猛烈に暑くなってきた。