16 もちろん、会いたいから
「だからね、チョットマ」
と、柔らかく言ってくれる。
「うん」
「サリが自分の部屋の中で自殺して、再生されないまま死んでいる、なんて想像はしないほうがいいと思う」
そんなことはありえないし、もしそうだとすれば、恐ろしくて悲しい想像をしなくてはいけなくなる、というのだった。
「うん」
チョットマはンドペキに、何かを言いたかった。
なにかを。
でも、それが何なのかがわからなかった。
「チョットマ」
「はい」
え、なに?
何を話してくれるの?
構ってくれるの?
声を掛けてくれたものの、ンドペキもなかな次の言葉を発さない。
もどかしい時間。
今、どこにいるの? と、聞いてみたい。
もちろん、会いたいから。
でも、チョットマは、自分にそんな勇気がないことを知っている。
心の痣がまた少し大きくなった。
いつのまにか、サリの部屋の前に来ていた。
他の部屋と同じように、窓はない。
明かりが漏れ出るという構造ではない。
白い壁に分厚いドアがついているだけ。
外見からは、在宅の有無は全くわからない。
誰が住んでいるのかさえ。
チョットマは、ンドペキの次の言葉を待ちながら、サリの扉を見つめた。
ゴーグルのモニタは、サリが在宅していないことを告げていた。
ジーピーエスに反応なし、ということだ。
スコープを使えば、部屋にサリがいるかどうか、分かるかもしれない。
しかし、そんな破廉恥なこと、できるはずもない。
「サリのこと。おまえが気落ちしているのは、痛いほどわかる」
「……」
「わかってると思うけど、悲しみを共有しているよ。俺も、ハクシュウも。隊のみんなが」
「うん」
熱いものが、胸に込み上げてきた。
「じゃ、切るよ。元気出せって言っても、出てこないけどね」
「うん、……あ、待って」
「ん?」
「あの、私を……、……、えっと、えっと、これからもよろしくお願いします」
「なんだ、それ。当たり前じゃないか」
とそのとき、チョットマはサリの部屋を見つめている者の存在に気付いた。
あっ、ハワード!
あいつ、何を!
「ンドペキ! ちょっと待って!」
今、サリの部屋の前に。
が、既に通信は切れていた。
もう何度呼びかけても、リキュールの後ろめたさは戻って来てはくれなかった。




