152 空に伸びていく三本の砂埃
それにしても、ンドペキってやつは。
もう、何度目だろう。こう思うのは。
あなたのおかげでこんなことに。
そう思っている人もたくさんいるんだよ。
口にはしないけど。
スジーウォンなら、言うのかもしれないな。
でも、自分でも気にしているみたいね。
あんなふうに、皆に謝るなんて。
すまないって頭を下げられたら、言えなくなってしまう。
そういや、ンドペキは仲間型のリーダーだって。
ああいうのを仲間型っていうのかな。
隊員達は皆、ンドペキのことが好き。
あんなことがあっても。
そんな感じ。
今頃、何してる?
たぶん、なにもすることがなくて、昼寝でもしてるかも。
あの女を見舞っているかもしれないな。
ねえ、サリ。
ンドペキが好きだったでしょ。
そう感じてたよ。
ひとりの男として。
そんな目でンドペキを見ていたよね。
もちろん、ンドペキの前で、そんなそぶりは絶対に見せなかったけど。
ああいうのが恋なのかも。
そんなサリを見ていて、私、少し嫉妬していたのかも。
なぜなんだろう。
ンドペキはいつも私達をそんな気分にさせる。
あっ、そうか、だからンドペキは仲間型なんだ。
私、直情タイプって言われるけど、サリ、あなたはじっくりさん。
思い込んだらやり遂げる強い人。
だからかな。
ンドペキがあなたを誘ったのは。
根に持ってる?
そんなことないよ。
きっともうすぐ忘れるから。
それに、好きとか、恋とか、まだ分からないし。
二度目の休憩から、三人はかなり距離をおいて走った。
街が近くなり、時折、他の攻撃隊の兵を見かけるようになった。
幸い、関心を示す者はいない。
ハクシュウ隊は、まだ、いわゆるお尋ね者にはなっていないのだろう。
チョットマは少し安心した。
そのことを伝えようかと思ったが、砂埃に見え隠れしながら先を行くハクシュウの背中を見ると、できなかった。
もしかすると、涙が出ているのかもしれない。
「クソ、砂埃が入ってくる。今度はもうちょっと高価なマスクを買おう」
と、口の中で無理やり呟いてみた。
まさか自分が泣いているとは思いたくなかった。
高速での空中走行は、派手な砂埃が舞う。
荒野の空に伸びていく三本の砂埃。
兵士が街に戻るとき、普通に見られる光景。
どうぞ奇妙に思われませんように。
ハクシュウ隊だと気づかれませんように。
チョットマはそう祈りながら、街を目指した。
それぞれが勝手に街に入り、待ち合わせということになっていた。
街の中央広場にある正体不明のオベリスクで。