139 チョットマとスミソ! パリサイドに!
またたく間に休息時間の三十分が過ぎた。
隊員達は、割り当てられた部屋で短い休息を取った。
大広間には有り合わせの食事と飲み物が用意された。
ンドペキは、様々な思いを忘れて、ホスト役に専念し、様々な準備に走り回った。
洞窟周囲の警戒に当たっている隊員からは頻繁に連絡が入り、敵の姿は見えないと伝えてきた。
女は目を覚まさなかったものの、一命は取り留めたようで、容態は安定に向かっていた。
「全員、集まっているか!」
大広間にハクシュウの声が響いた。
どよめきが広がった。
ハクシュウは装甲は身に着けているものの、頭には何も被っていなかった。マスクさえ。
スキンヘッドに、骨太の白い顔立ち。
彫りの深い眼に黒い瞳。
薄い唇に無精髭。
頬と顎が尖り、首が太い。
どことなくエジプトのファラオを思わせる。
厳しい顔をしていた。
「皆も顔を見せろ」
静かに言い、床に腰を降ろした。
ンドペキも、マスクまで取るのは初めてのことだった。
サリの捜索のときの会議で、仲間の前で初めてヘッダーを取った。
それでも緊張したものだが、今日のハクシュウは最初から素顔で登場したのだ。
ハクシュウの意志の強さをひしひしと感じた。
思い切ってマスクを取り、素顔を見せた。
思いのほかすがすがしくて、恥ずかしいというより、誇らしい気分がした。
スジーウォンも迷うことなくマスクを取った。
目を見張った。
想像とはまったく違っていた。
自分より年上ではないかと思っていたし、一筋縄ではいかない気性の激しい顔つきかと思っていた。
なんとなくではあるが、肌も瞳も髪も黒く、噛み付きそうな口をしていると思っていた。
ところが、スジーウォンは切れ長の目が涼しげな印象の、東洋的な美人だった。
白銀の短髪に白い肌。鼻筋が美しい。
むっちりした赤い唇が色っぽい。
チラリと目が合うと、照れたように目を伏せた。
コリネルスもすぐにマスクを取った。
こちらは想像どおりの男だった。
浅黒い顔に、盛大に髭を蓄えている。
白髪交じりの髪が無造作に、面長な顔の上に乗っていた。
唇を引き結び、青い目がハクシュウを見つめている。
ハクシュウが隊員達を見渡した。
「さあ、皆も座れ!」
隊員たちがぎごちなく、ヘッダーを外しかけている。
そのときだった。
「パリサイド接近中!」
「身を隠せ!」
「間に合いません! ものすごいスピードで降下してきます!」
「洞窟の入り口から離れろ! 応戦するな! 位置を特定されるな!」
「了解! ああっ!」
声が途切れた。
大広間はにわかに殺気立った。
が、報はすぐに続いた。
「チョットマとスミソ! チョットマとスミソ! パリサイドに!」
「なに!」