129 なんだって、サリを
チョットマは、ンドペキらが施設に入ってから、不安でたまらなかった。
階下の扉が閉ざされてしまったからである。
瓦礫は撤去され、宿営地が建設された。
見張りが立てられ、施設の階段の下奥深くにも要員が配置された。
コリネルスがてきぱきと指示し、隊員たちは効率よく動いた。
万一、マシンが攻めてきても大丈夫だったし、いつンドペキ達が帰ってきてもいいように、救護の体制も整いつつあった。
しかし、扉が閉まってしまう事態は、誰も予想していなかった。
応援隊を派遣しようにも、扉は硬く閉ざされて、びくとも動かない。
通信も途絶え、中の様子を掴むこともできない。
無事に帰ってくることを祈るしかなかったのである。
ほんとにンドペキは。
それはないよ。
私にひと言もないなんて。
それに、なぜあんな女と一緒なの?
あの女、一体、あなたのなんなの?
私はただ振り回されるだけの役?
それならそれでも、いいけど。
あなたが無事でさえあれば。
でも、まだ信じられない。
サリ。
ンドペキ、あなたサリを……。
絶対に、信じられない……。
きっと、何かの間違い……。
だって、サリを食事に誘ったじゃない。
私、パパ以外にそのことを話していないけど。
誰にも絶対に言えないじゃない。そんなこと。
それにもう、言いそびれてしまったし。
「なんだってサリを」
ンドペキの告白は地上にいる者たちにも、衝撃を与えた。
チョットマにすれば、こんな裏切られ方はない、と悲嘆にくれたのである。
大げさに話題にする者はいなかったが、地上にいる誰もが、ンドペキには絶望しただろう。
殺そうと思っただけで、実際には殺していない。
だからといって心が収まるものでもなかった。
ンドペキは大切な存在……。
愛とか恋って、考えてみたこともないけど。
やっぱりンドペキは私の上官だから。
そして仲間だし。
友達。
兄貴。
慕う存在……。
自分の気持ち。
揺らぎ始めてる?
ううん。
あなたの言葉が、実感として伝わってこないから。
早く、上がってきて。
そして、もう少し話をして。
私に。
チョットマは溜息をついた。
久しぶりにサリのことを思い出したい気分になっていた。
パリサイドがサリの顔を拝借したと言ったことも思い出した。
サリは死んだのだ、という考えも浮かんできて、すぐにそれを打ち消そうとした。
そして思いついた。
バードという人がここに閉じ込められているのなら、サリもここにいるのではないか。
サリ。
レイチェル。
バード。
スゥ。
それにパリサイドの、あの女。
もしかして、みんなライバル?
はあ、なんだかなあ。
何でもいいけど、早く出てきて、私に声を聞かせて。
私に。