13 まさか素っ裸にされて
ひょろりと背の高い男が、ジェラートを売っている店の看板の脇に立っていた。
グレーのジャケットを着込んで、いかにも勤め人風。
マスクも付けず、浅黒い肌を見せている。
「その眼鏡で見ると、僕の体はどう見えるんだい? まさか素っ裸にされているんじゃないだろうね」
「えっ」
と、意識した瞬間、自動的にハイスコープのスキャナーのスイッチが入った。
男の表層が消え、肉体が浮びあがる。
同時に、非武装であることの証拠に、男の肉体の輪郭線が緑色に光り、全体が白っぽく透けて見えた。
あっ。
私、戦闘服のまま!
それに、いろんなことを考えながら、街中をわけもなく走ってた!
「そんなことは……」
チョットマは、あわてて裸眼モードに切り替え、なにか用なの、と言おうとした。
しかしその前に、男は既に背を向けて立ち去ろうとしている。
ちっ。
心の中で舌打ちをしたものの、気が変わった。
この若くてぶしつけな男は、いつも不思議なタイミングで声を掛けてくる。
街には数十万人が住んでいるはずだから、生活圏が一緒でなければ、そうめったに知っている人に出会うことはない。
チョットマが住むハンプット通りでは、隊の仲間とはよく出会う。
南門、つまりブルーバード城門の周辺に隊員達は住んでいるから。
サリの住まいも目と鼻の先。
しかし、この男は街の北部に住んでいるし、職場もそうだと言った。
そんなに簡単に、ばったり出くわすなんてことはないはずなのに。
男の名は知っている。
ハワード。
きざなポーズで名乗ったのは、もう数か月も前。
私を監視している?
たいしたことを話すわけでもなく、用件もない。
たいていは今のように、ひと言ふた言。
そしてプイと、どこかに行ってしまう。
フン、なんなのさ。
チョットマがこの男に持っている印象は、ただそれだけ。
自分から何かを話したことなど、一度もない。
しかし、今回ばかりは聞いてみようという気になった。
こいつなら、もしかして。




