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113 窪地での方針

 ハクシュウは部隊に大休止を命じてから、自分も食事を摂り、スジーウォンとコリネルス、パキトポークを呼んだ。

 今晩どうするかを相談するのだろう。

 依然、ンドペキの足取りは掴めていない。



 イコマはハクシュウと話をしたかったが、チョットマから離れて、自分だけが飛んでいって話しかけることははばかられた。

 あくまで自分はチョットマと行動を共にしているのであって、この行軍に参加しているわけではない。


 しかし、改めてアヤのことを頼みたい。

 ハクシュウがこちらに顔を向けてくれるときを待っていた。




「では、今からどうするか、相談しよう。チョットマも参加してくれるか」

「えっ、私もですか」

「そうだ。でも、実際は君と相談したいのではない。君のパパに参加してもらいたい」

「ハイ!」



 ありがたきかな!


 スジーウォンとコリネルスとパキトポークはヘッダーを被っている。

 どんな表情をしたのかわからないが、異議を唱えはしなかった。





 本隊から離れ、擂り鉢状の深い窪地に移動した。


 ------こういうところがいいのよ。政府の監視モニターや電波の傍受をできるだけ受けないようにするには。井戸の底のようなところが。街の近くじゃ意味ないけどね


 チョットマが伝えてくる。

「そうみたいだね」


 イコマは微細な電波の内容を読み取ることはできないが、存在の有無はわかる。

 窪地に降りていくにつれ、錯綜した電波の数はかなり少なくなっていった。


 ------これだけ街から離れてると、大丈夫かも




 輪になって地面に腰を落着けた。

 ハクシュウが、アヤの救出について伍長に意見を求めた。


「ここで野営するか、ンドペキの捜索を続けるかを話し合う前に、皆の意見を聞いておきたい」

 まず、発言したのはパキトポーク。

「救出? どこから?」


 もっともな意見である。

 イコマはハワードが情報を得てくれることを期待しているが、今のところ有意義なものはない。



 ハクシュウが聞いてきた。

「イコマさん、どうですか?」


 正直に言うしかない。

「街の北部にある巨大な施設、としか情報はありません」

 パキトポークが巨体を揺する。


「失礼だが、その情報は確かか? 街の北部ででかい建築物を見たことがない」

 

 殺人マシンといわれている、とは言えぬ。


「我々が行ったことのない、かなり遠いところか?」

「わかりません」

「あるいは森に隠されている?」

「申し訳ない」



 短い間を置いて、スジーウォンが声をあげた。

「探してみるしかないか」

「どこを?」


 明らかにパキトポークは乗り気でない。

 当然だ。

 まだ、ンドペキも見つかってはいないのだ。



 アヤを探して欲しい。

 自分にとってはこれが最優先。

 しかしそのためには、ンドペキが無事に見つかるという運も必要だ。

 その上で、彼らの親切に賭けるしかない。


「厚かましいことをお願いしているのは重々承知しています」

 もちろん、ンドペキさんの捜索を優先してください。

 ですが、もしバードが監禁されている施設に少しでも心当たりがあるようでしたら、ぜひお願いしたいと思っています。

 なんとかご協力をお願いできませんでしょうか。




「一刻を争う?」

「はい、そのようです。その施設から脱出できた者はいないと言われています。それに彼女は、普通の事務員です。戦うすべも身を守るすべも持っていません」



 泣きたい気持ちだった。

 自分が犠牲になってアヤが助かるのなら、迷うことなく身を投げ出すことができる。


 ユウとの再会を果たす、この願いを捨てるのではない。

 二兎を追うことができないのなら、現実に今窮地に立たされているアヤを助けたい。

 それが最後に自分ができること。




「我々に何ができるか、わかりません。なんのお役にも立てないかもしれません。しかし、もし娘さんを救出できるチャンスがあるなら、それを見逃しはしません」

 ハクシュウが言ってくれた。

 スジーウォンが頷いてくれる。


 アヤが監禁されている、すなわち、政府によって。

 救出という行為は、取りも直さず刑務所からの脱獄ほう助を意味する。

 政府を敵に回すことになる。


 肉体を持たないフライングアイ。

 頭を下げることもできない。

 何度も何度も、電波を変換した声で、礼を言うしかない。




「いいな」

 ハクシュウはコリネルスとパキトポークに念を押すと、各隊員にもこの方針を伝えろ、と言った。

「了解」

 パキトポークは応えたが、コリネルスは黙っていた。

「どうした、コリネルス」




 コリネルスはそれでも応えず、立ち上がった。



「何者かが近づいている!」

 全員が驚いて立ち上がった。


「隊員からの一報です!」

「うむ!」

「北西の方向! 数、不明!」

 コリネルスの声が緊迫している。


「機種判別不能! レーダーに反応しない!」

 隊員からの報告を口移しに伝える。


 ハクシュウがヘッダーを被り、全軍に戦闘準備を命じた。

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