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104 喜びと不安が少し

 パパの話は、鮮烈だった。

 政府を敵に回すかもしれない。


 ハクシュウも即答はできず、腕組みをして荒野の真ん中に突っ立ったままだ。

 とんでもないことを聞いてしまった。

 万一、今の会話が政府に捕捉されていたら、と思うとぞっとした。




 ハクシュウが口を開いた。

「レイチェルとはどういう人物ですか? ンドペキは姿を消す前に、レイチェルと部屋の前で話していたんですよね?」


 パパが話したレイチェルの人となりは、かなり違和感のあるものだった。



 レイチェルはバードというパパの娘を監獄に放り込み、ンドペキに何かを命じた。

 その指示は、隊の誰にも告げるなという極秘命令だったはず。

 そうでなければ私には伝えてくれただろう。

 四時間おきに連絡を取り合おうと、あれだけ約束したのだから。



 チョットマは、この一連の出来事のどこかに、あるいはすべてに悪意があるように感じた。




「かなりきわどい話ですね。イコマさん、私達と一緒に来ますか?」

「お邪魔でなければ、連れて行ってください」


 チョットマは驚き半分、うれしさ半分。

 ハクシュウは、明確には言わないまでも、パパの願いを受けようというのだ。


「でも、少し待ってください。急いで部隊に招集をかけます」

「ありがとうございます。なにとぞよろしくお願いします」



 ハクシュウが、当初の集合場所に全員至急集まるように指示を出した。


「隊長! でも、私、手ぶらです!」

「うむ」


 ハクシュウは、補給班は二時間後に出発せよ、と指示を付け加えた。

「補給班のリーダーはチョットマとする!」

「ええっ! 私?」


 ハクシュウは通信を切ると、

「やってみろ。パパと連絡を取りながら新しい情報が入れば、俺に連絡しろ」

「ハイ!」




 チョットマは、自分がリーダーに初めて指名されて、気持ちが熱くなった。

 コリネルスが言ったように、親分型のリーダーになるのだろうか。

 自分ではそう思わなくても、メンバー達にそう思われるのだろうか。


 二時間後に出発してから、先行しているハクシュウの部隊に合流するまでの数時間の間だけだから、トラブルは発生しないだろう。

 それでも少し緊張した。


 自分が持っていかなくてはいけないものを頭の中で計算した。

 十日分の食料、飲料水精製器具、シェルターや寝具、トイレキットや非常用エネルギーパット、汎用弾薬、医薬品の数々、万一の場合の信号弾、毛布やタオル、インナーなど。

 隊員各自が準備できなくなった分、その量は膨大だ。三十六人分!

 これらをカートに収納して、運ばなくてはならない。

 もちろん完全武装した状態で。

 浮遊タイプのカートなので、重くて閉口することはないが、それでもかなりの重労働だし、危険でもある。



「支援要員を残しておく」

 ハクシュウが言った。

「ありがとうございます!」

「必要ないだろうがな」

「あ、いえ、お願いします!」

「俺はぜんぜん心配していないぞ」

「……」

 ということは、心配しているということではないか。



 少し心配になってきた。

「あの、追いつけるようにしてくださいね」

「バカめ! おまえが俺たちに追いつけないで、誰が追いつける!」


 ンドペキを探しながらの行軍だ。

 追いつけないほど速くはないだろう。



 チョットマの気分はめまぐるしく変わった。

 不安、心配。

 そして、喜び。


「頑張ります!」

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