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11.思い出話をしない旧友たち―――ミーティング

 

 アキラは莫大な魔力と、自在に変形できる『纏』を駆使し、有翼化し風に乗ることができる。

 気流を掴めば王都まではすぐだ。

 しかし、カースタッグ上空で話しかけられた。


「予告。『勇者アキラは止まらざるを得ない』」


 蒼い軍服に銀色の部分鎧。

 折り目正しく、姿勢良く立つスラリとした美丈夫。

 銀縁眼鏡の奥には鋭く、知的な眼差し。

 リドリア聖騎士団。別名聖堂騎士団。副団長、ユーラ・バラン。

 

 空中に足場を作る『結界』術の応用で中空で待ち構えていた。


「はじめに。『勇者アキラ、聖女様に向けてのごあいさつ』」

「これはこれは。聖騎士副団長様。それはおれに降りろと言っているんですか?」



 アキラはやむなくカースタッグ城に降り立った。

 聖堂ではミーティアが待ち構えていた。

 アキラはユーラに促され座る。



「第一章、第一節……『再会』」

「まともに話せよユーラ。煩わしい」

「……『感動の再会』」

「いや、そうじゃな―――ああ、もういい。しゃべるな」


 聖騎士のユーラ、聖女ミーティア、勇者アキラ。

 この三人は十年前、旅をしてハラスの配下と戦った元一行。いわば、昔馴染みだ。


「おれがここに来ると分かっていたようだな」

「その様子だと、ドド様にはお会いになったようですね」

「はぁ……相変わらず、全て見透かしたような態度だな。ミーティア」

「元パーティメンバーですもの。貴方のことぐらい把握しています」



 ミーティアがアキラの前まで歩み寄った。


「ああ、そうだ。魔力無しにやられた。満足か?」


 温かい光がアキラの腕を包む。

 粉砕された片腕を『治癒』するミーティア。


「お前の周りには変なやつばかりだな。王都で話題にされてるぞ」

「命題『変わり者のいう変人とは?』」

「黙れ変人」


 ユーラは首を竦める。



「あのオークは特別おかしい。付き合うのはやめておいた方がいい」


 エリクサー。

 神秘の秘薬。

 利用価値はある。しかし、その考えこそ、アキラが危惧していること。



「ハラスが生み出した魔物にあんな力が宿ると知れ渡れば、人はそれを求める。そして人間同士が争い合う。私は何か間違ってますかねぇ? 聖女様」

「いいえ。貴方は正しいです」

「よかった。聖女様は偽善より大義を重んじる方だと信じて居りました」

「私も、危険を冒した甲斐がありました。どうやら貴方は信用できます」

「……それは、どうも?」



 アキラは腑に落ちない。

 聖女はドドを殺すことを肯定しているとも受け取れる。だが、そうではない。

 彼女がアキラを信用したのは結果ではなく、考え。さらに言えば、ここまでの過程。


 ドドの正体を知り、何をしたか。その行動。



「おれがハラスの力を求めるかどうか疑っていたのか?」

「いいえ。貴方のことは良く知っています」



 ミーティアは過去を振り返り、笑みを浮かべた。

 アキラもまた同じ旅の記憶を思い浮かべた。

 ユーラは二人の会話に付いて行けていない。


「己の利益と大義のためならどんなことでもする」

「そういうお前は薄っぺらい正義感に捕らわれていた。真実を知ってなお、この世界を救おうとするお前にはついて行けないね」

「ですが、あえて今の平穏を壊すことは看過できないのですよね?」

「何が言いたいんだ? その遠回しな話し方はやめてくれ」

「誰に指示されてここに?」

「……関係ないだ、ろ?」



 アキラは気付いた。

 聖女のこの妙な動き。

 ドドのことを擁護しながら、暗殺のことを知って放置していた。


 彼女が確かめているのは自分。自分の行動。その行動を促した情報源。

 その先にいる、この状況を作り出した者。



「まさか……ハラスの力を欲する者がすでにいるとでも?」

「わざわざ元勇者の貴方をドド様にけしかけた。それは不自然です」

「……考えすぎだ。おれはあのオークを確実に始末するための保険だったというだけだ」

「実録インタビュー、『敗北者は語る』」

「ユーラ、今真面目な話をしてるんだ。入ってくるな」

「そもそも勇者召喚の儀でハラスの魔力が干渉すること自体おかしいのですわ。あの場には幾重にも結界が張られて居りました」



 ミーティアが恐れていたこと。

 それはハラスの力を取り込んだものがすでに、人類社会の中で暗躍していること。



「はは、まさか……そんな……」

「アキラ、貴方の恐れている通り、ハラスの力の有用性を信じ、その力を取り入れる者たちが動き出すでしょう。しかし、それはドド様の存在とは関係なく、人の業が招き入れる」



 アキラは現状維持を望み、ドドを殺そうとした。しかし、すでに事態は進行している。



「エルダーオーガを倒したオーク。その報せを聞いた時、その者はこの実験の成功を確信したことでしょう。次は、世間に問い始める。『ハラスの力をどう利用するべきか』と」

「だから奴は消すべきだ」

「いえ、貴方風に言えば、ドド様には利用価値があります」

「エリクサーか? いや、あれは確かに驚異だが脅威でもある」

「いえ、囮です」


 アキラは驚いた。自分はまんまと引っかかり、ここまで来た。

 ラブロンの荒神への接触はよりリスキーになった。

 それでも、積極性を見せる者には何かがある。

 絞り込みができる。

 

「……! 聖女らしくないな。だが、囮か……あり、かもな」



 手がかりは少ない。

 誰がハラスの力を利用しているのか。


 だが、この状況への対応策はシンプルだ。



 その誰かにとっての実験は進行中。

 実験対象のドドへのアプローチは欠かせない。



 ドドへ接触した者を辿れば、正体は判明する。




「王都で信用できる方は今のところ三人だけです。貴方、イリリオ公、そしてジュエル様」



 イリリオはエリクサーの情報を王にさえ話さなかった。そもそも、腹芸ができるタイプではない。

 ジュエルは積極的にドドが勇者召喚された可能性を否定した。彼女ならあの場で肯定するだけで世論を操作できたはずだがしなかった。



「おれは引退した身だ。これ以上関わる気はない。あいさつは済んだ。じゃあな」


 アキラは席を立った。


「……終章『勇者アキラの置き土産』」

「……はぁ。おれに聖堂の動きを伝えたのは、最も尊い血を受け継ぐお方だ」



 ミーティアは耳を疑った。

 王太子。次の国王。



 納得もできる。立場的に情報はいくらでも集められ、密かに実験を進めても、特権で隠し通せる。



 王太子は傍若無人でわがままだと有名だ。

 その反面、堅実でどこか純粋さを持つ。


 彼がその純粋さゆえに、ハラスの力に手を染めたのか。

 あるいは純粋さを利用されているだけか。



「ワタクシも王都に戻る必要がありそうですね」

「次章『名探偵ミーティア、王宮大捜査波乱編』」

「はぁ、ユーラ……」




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― 新着の感想 ―
[気になる点] 意外だ!単純な構図じゃなかったんだな。 ストレートな脳筋的な話で、こんな複雑な背景があるとは思わなかったわ。 [一言] 意外だ
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